米USTR、ベトナムに対する通商法301条調査開始、為替操作と違法木材が対象
(米国、ベトナム)
ニューヨーク発
2020年10月09日
米国通商代表部(USTR)は10月8日、1974年通商法301条に基づき、ベトナムの為替政策に対する調査開始を官報で公表した。また、同国の違法な木材輸入・使用への調査も進める。両調査ともに11月12日までパブコメを募り、今後12カ月以内に対抗措置を含め、調査結果を報告する。
USTRは為替政策に対する調査の経緯として、過去3年間にわたりベトナム通貨(ドン)の実効為替レートが過小評価されている点を挙げた。ドンが2017年に約7%、2018年に約8.4%分がそれぞれ過小評価され、2019年にはベトナム国家銀行が約220億ドル相当の外貨を購入し、1ドル当たり1,090ドン分を切り下げたと指摘した。USTRは今後、ベトナム政府の為替介入が米国の商業の負担や制約になっていないかを重点的に調べる。
米商務省は2020年4月、外国政府の為替操作を補助金とみなして特定企業からの輸入に相殺関税を課す規則を施行している(2020年2月7日記事参照)。6月には初めて同規則に基づき、ベトナム産の乗用車・軽量トラック用タイヤの輸入に対する調査を開始した。為替操作を理由とする対抗措置には、産業界や有識者から反対が出ている(2020年2月12日記事参照)。
USTRは調査開始に伴い、パブリックコメントを募集している。重点的に募集するコメントは以下のとおり。
- ベトナム通貨(ドン)の過小評価の有無およびその程度
- 通貨の過小評価に資するベトナムの行動や政策、慣習
- ベトナムの行動や政策、慣習が通貨の過小評価にどの程度影響しているか
- ベトナムの行動や政策、慣習が非合理的または差別的なものか
- ドンの過小評価により生じる米商業への負担または制約の程度
- 1974年通商法に基づく判断(必要な場合の対抗措置を含む)
パブコメは11月12日が提出期限で、企業・業界団体などはUSTRが指定するウェブサイト(注1)からコメントや関連情報を提出できる。USTRはパブコメを踏まえ、調査を開始した10月2日から12カ月以内に、ベトナムの為替政策が不公正な貿易慣行に当たるかを判断する。
また、USTRは8日、ベトナムの木材輸入・使用についても、301条に基づく調査開始を官報で公表した。ベトナムが主にカンボジアから輸入する木材が自然保護区(周辺)で伐採されており、両国の国内法・規則や、絶滅危惧種の国際取引に関わるワシントン条約(CITES)に抵触する恐れがあるとUSTRは言及している。USTRは、ベトナム政府が木材の輸入時に原産国を記録していないとの報告にも触れ、今後は同政府が違法行為を意図的に助長していないかも調査する。調査に際しては、為替操作と同様のスケジュールでパブコメ(注2)を募集する。USTRによると、ベトナムは世界有数の木材製品の輸出国で、2019年の木製家具の対米輸出額は37億ドルに上る。
(注1)連邦ポータルサイトのドケット番号USTR-2020-0037から提出可能。
(注2)連邦ポータルサイトのドケット番号USTR-2020-0036から提出可能。
(藪恭兵)
(米国、ベトナム)
ビジネス短信 2af99aeb92098453