米商務省、為替操作に対する相殺関税適用にかかる最終規則を発表、4月6日施行
(米国)
ニューヨーク発
2020年02月07日
米国商務省は2月4日、外国政府による為替操作を特定企業への補助金とみなして、同企業からの輸入に相殺関税を課す際の最終規則を官報で公表した。4月6日から施行する。
トランプ大統領の選挙公約を実行へ
商務省は2019年5月、本件にかかる最終規則案を発表し、パブリックコメントを募集していた。今回の最終規則は、それらのコメントを踏まえたもの。商務省は、相殺関税を規定する1930年関税法(スムート・ホーリー法)および、既存の連邦規則(連邦規則集第19巻第3章351)のいずれも、外国の為替操作による潜在的な補助金に対し、相殺関税を認定する手続きを明示していないとして、今回の最終規則策定に至ったとしている。
トランプ大統領は2016年の米国大統領選挙のキャンペーンにおいて、特に中国を念頭に置いた外国の為替操作への対応を選挙公約に掲げていた。今回の措置は、その公約達成のための1つのツールとなる。
財務省とは異なる法的根拠に基づいて為替操作を認定
官報によると、同規則では、外国政府による為替操作を認定するまでのプロセスを次のように定めている。商務省はまず、外国政府による為替レートの切り下げがあったかを認定する。「切り下げ」の有無については、外国の実質実効為替レート(注1)と、その均衡為替レート(注2)を比較して判断するとしている。「外国政府による介入」の有無を判断する際には、中央銀行や金融当局による金融政策ではなく、為替レートを変更し得る行動に関する当該外国政府の透明性の度合いを考慮するとしている。
商務省は「為替切り下げ」の存在を認定して初めて、特定の企業に「利益」がもたらされたかを判断する。その際には、当該企業が実際に受け取った自国通貨の額と、為替切り下げによる自国通貨と米ドルのレート差がなかった場合に受け取っていたはずの自国通貨の額の差に基づいて認定するとしている。対象となる「企業」は、国際的にモノを売買する企業としている。
外国の為替操作の認定については、財務省による半期為替政策報告書での発表(2020年1月16日記事参照)が常になっており、コメントでも省庁間の権限の混在を指摘する声も多かった。商務省はこの点について、財務省の手続きとは目的も法的根拠も異なり、商務省は議会から国内産業を救済するための権限が与えられていると強調している。
(注1)各国の物価格差を調整して算出された為替レート。
(注2)各国経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)を反映した為替レート。
(磯部真一)
(米国)
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