メルケル首相、自動車産業が直面する課題を関係者と議論

(ドイツ)

ミュンヘン発

2020年09月11日

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は9月8日、政府と経済界、労働組合の関係者らと3回目となる「協同アクション・モビリティー」会議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを開催した。連立与党が2019年3月に開催を決定したもので、連邦政府・州政府、経済界、労働組合などの代表者が集まり、自動車産業が直面する課題を克服するための政策と持続的戦略の策定を目的とする。当地の経済紙「ハンデルスブラット」(9月7日)によると、経済界からは今回、BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンの3大自動車メーカーのほか、ボッシュ、コンチネンタル、ZFなどの自動車部品大手が参加したもようだ。

今回の会議では、新型コロナウイルスの影響を受けながらもデジタル化、電動化など大きな産業構造の変化に直面する自動車産業について議論し、主として、(1)自動車部品メーカーへの支援策、(2)自動運転の実用化、(3)モビリティーデータの共有、(4)電気自動車(EV)用充電施設の拡充、(5)代替燃料について話し合った。

会議ではまず、(1)ドイツの自動車産業が景気減速と構造変化に直面し、(2)連邦政府の経済対策(2020年6月10日記事参照)や短時間労働給付の延長などが新型コロナウイルスの影響抑制に寄与していることで一致。その上で、ドイツは将来の自動車産業にとって、技術にオープンで、世界を牽引する立場であり続けるべきだとし、そのためには、新駆動技術、デジタル、雇用、環境保護などの構造的課題に関係者が一致団結して対応すべきとした。

具体的なアクションとして、まず、新型コロナウイルスの影響を特に受けているとされる自動車部品メーカーの支援策として、部品メーカー向け資本強化策の導入の是非と、導入する場合の具体案を11月に開催予定の次回会議までに審議会で検討することとなった。また、自動運転の実用化に向けては、現在、交通・デジタルインフラ省で作成中の自動運転に関する法案の準備を進めるとともに、インフラ、通信環境などを整備する。2022年までに自動運転機能を搭載した自動車の導入を目指す。

モビリティーデータの共有は、ガイア-エックス(2020年6月8日記事参照)などを活用した上で、欧州のルールに基づいたデータの収集や共有を基礎としたモビリティー用のデータスペースを作る。2021年10月にハンブルクで開催されるモビリティーのデジタル化がテーマのITS世界会議までの実現を目指す。自動車産業もこの実現に協力し、可能な範囲内でのデータの共有を目指すこととなった。

EV用充電施設の拡充では、(1)充電施設での支払い方法統一に向けた経済・エネルギー相、交通・デジタルインフラ相とエネルギー会社の対話の実施、(2)自動車産業が2022年までの整備を約束した1万5,000の公共充電施設の整備についての四半期ごとの進捗報告で合意した。また、バイオ燃料、グリーン水素(注1)などの代替燃料の可能性について、専門者会議「国家プラットフォーム 未来のモビリティー(NPM)」(注2)が2020年末までに提案を行うこととなった。

なお、自動車産業が集積するバイエルン州やニーダーザクセン州などが求めていた新車購入補助金「環境ボーナス(Umweltbonus)」(2020年7月15日記事参照)の対象を環境性能の高い内燃機関車に広げる点については、連邦政府発表の会議に関する文書では触れていない。

(注1)再生可能エネルギー由来の電力を利用して水を電気分解して生成される水素。

(注2)政治や民間セクター、産業団体、研究機関、非政府組織の専門家により構成される。持続可能で環境や気候に優しく、競争力のあるモビリティー社会の実現のため、政府に対する政策提言などを行う。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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