2021年予算案、不確実な時代への投資に重点

(オランダ)

アムステルダム発

2020年09月25日

オランダ政府は9月15日、2021年度(暦年)の予算を発表した。2021年予算には、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済対策に加え、気候変動、教育、安全保障などへの投資、さらにオランダの長期的な収益力の強化などが盛り込まれている。新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済対策の中心は、2021年6月まで延長となった経済支援策(2020年9月4日記事参照)で、失業者などの再トレーニング支援などに約14億ユーロ、景気刺激策としての住宅建設などのインフラ投資に約20億ユーロの追加措置が盛り込まれた。

気候変動対策は、洋上風力などの持続可能エネルギー発電の導入推進を継続するほか、二酸化炭素(CO2)削減技術の研究開発、グリーン水素(注)の実用化などに6,000万ユーロを充てる。また、窒素排出削減では、農業、製造業、建設業などの部門で2030年までに50億ユーロ投資し、健全な窒素レベルを目指す。そのほか、教師不足に対応する3,200万ユーロの追加措置や、組織的犯罪対策、司法分野でのデジタル化推進などの治安面への取り組みの強化も発表した。これらは、連立政権の政策合意の履行でもある。

オランダの繁栄・競争力強化の面では、知識、イノベーション、インフラの3分野を対象とした200億ユーロ規模の「国家成長基金」の設立を発表しており(2020年9月11日記事参照)、労働市場の機能改善のため、個人事業主と企業従業員との税負担の差の軽減、年金制度改革などに取り組む。

税制改正の動きとしては、法人税の標準税率(25%)の引き下げを見送る一方、軽減税率を2021年に16.5%から15%へ引き下げる。また、軽減税率が適用される課税所得額を、現行の20万ユーロから2021年に24万5,000ユーロ、2022年には39万5,000ユーロまで引き上げ、適用される中小企業を拡大する。企業の投資奨励策として、2021年から機械設備などへの投資について、金額に応じて、従業員の源泉徴収(賃金税)を控除できる投資割引スキーム(BIK)を導入する。さらに、多国籍企業連結グループ内での損失の相殺を2021年までに制限するなど公正な課税に取り組む。

同時に、予算策定の基となった最新の経済予測も発表され、2020年の実質GDP成長率をマイナス5.0%、2021年は3.5%とした一方、失業率は2020年の4.3%から2021年には5.9%まで上昇、政府債務残高は2020年のGDP比59.1%から2021年は61.1%に増加し、財政収支も赤字が続くと予測した(添付資料表参照)。

(注)再生可能エネルギーにより生成された水素。

(高橋由篤)

(オランダ)

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