総額74億ユーロの雇用・経済対策を発表

(アイルランド)

ロンドン発

2020年08月07日

新型コロナウイルスの感染拡大による経済への打撃を緩和するため、アイルランド政府は7月23日、総額74億ユーロ規模の雇用・経済対策外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。2020年3月に発表した経済対策(2020年4月1日記事参照)の一部内容を踏襲・期間延長しつつ、付加価値税(VAT)の引き下げなど新たな政策も盛り込んだ。内訳は直接的な支出が40億ユーロ超、企業支援のための減免税措置が10億ユーロ、信用保証枠の拡大が20億ユーロ。

主な内容は以下のとおり。

  • 3月から実施中の従業員給与補填(ほてん)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの一部内容を変更し、2021年4月まで延長。新型コロナウイルス関連の影響を受け、売上高が30%以上減少した企業を対象に、従業員1人当たり週203ユーロを上限に給与を補填(「Employment Wage Support Scheme」)。
  • 中小企業向け融資の利率を初年度0%に。
  • 企業向け助成金を3億ユーロ上乗せして総額5億5,000万ユーロへ拡大。1社当たり支給額2,000~1万ユーロを4,000~2万5,000ユーロに引き上げ、従業員規模・売上高などの申請要件も緩和(「Restart Grant for Enterprises外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」)。
  • 全ての企業に対し2020年9月末まで事業税(Commercial Rates)の支払いを免除。
  • 中小企業、一次産品生産者、従業員500人未満の中堅事業者に対する1件当たり1万~100万ユーロの銀行与信などの80%を最大6年間政府が保証、総額20億ユーロ(「COVID-19 Credit Guarantee Scheme外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」)。
  • 3月から実施中の新型コロナウイルス・パンデミック失業手当を2021年4月1日まで7カ月延長(「Extension of Pandemic Unemployment Payment外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」)。
  • 失業期間6カ月以上の失業者へ1万件の就職先・就職訓練を支援するなど、職業訓練・就業支援に2億ユーロを拠出。
  • 2020年9月~2021年2月までVATの税率を23%から21%に引き下げ。

学校再開に向けた財政拠出も発表

政府はこの雇用・経済対策に加えて7月27日、安全面での懸念の声が強い学校再開(2020年7月27日記事参照)に対処するための追加予算計画も発表。衛生対策強化や教職員の追加雇用などに3億180万ユーロを計上し、23日の雇用・経済対策に盛り込んだレイアウト変更などのための7,500万ユーロと合わせ、総額3億8,000万ユーロ近くを学校再開対策に充てる。例えば中等・高等教育では、各教室当たりの生徒数を減らすことによる学級増などに対応するため、教師1,000人以上を新たに採用する予定だ。

政府はさらに、雇用を伴う長期的な景況回復を実現するため、年内にも新たな経済計画を策定する予定だ。

(杉田舞希、尾関康之)

(アイルランド)

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