約37億ユーロの経済対策も、民間研究機関はマイナス7.1%成長を予測

(アイルランド)

ロンドン発

2020年04月01日

アイルランド政府は3月24日、新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響を緩和するため、給与補填(ほてん)などを含む経済対策外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。これまでに発表していた、同感染症に関わる疾病手当や失業手当の支給額も拡大する。各種支援策の総額は、向こう12週間で約37億ユーロと推定している。主な内容は添付資料のとおり。

政府の経済対策に加え、アイルランド中央銀行は3月18日、銀行与信を拡大するため、カウンター・シクリカル・資本バッファー(CCyB)(注)の水準を、4月2日から1%から0%に引き下げると発表。19日にはアイルランド銀行・決済連盟(BPFI)が、国内の主要行・ノンバンクが感染症の影響を受けた顧客に対する支援拡大を確約したと発表している。各民間金融機関の支援策には、最大3カ月間の企業向け融資返済猶予や、個人を含む住宅ローンの返済猶予などが含まれる。

一方で、国内経済の見通しは厳しい。経済社会研究所(ESRI)は3月26日、一斉休校や集会の禁止などの規制(2020年3月18日記事参照)が12週間続いたと仮定した場合の経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。2020年通年ではマイナス7.1%の経済成長に陥るほか、これまで好調だった雇用も大幅に悪化し、第1四半期に4.8%だった失業率は第2四半期には18%に跳ね上がり、35万人以上が職を失うと推計している。ただし、この予測は、3月24日発表の政府経済対策を織り込んでいない。また状況が極めて流動的で、従来の経済予測モデルの適用は困難としている。しかし、感染拡大に歯止めがかからない中、政府は3月28日に行動規制外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを大幅に強化。食品の購入、医療行為、運動などの目的以外での外出を自粛するよう国民に求め、食料品店、薬局、銀行、ガソリンスタンドなど一部業態を除く、大半の店舗の一時閉鎖を要請した。経済的打撃はさらに拡大する可能性がある。

(注)景気変動による損失に備えて、銀行が積み上げるべき資本の水準。

(杉田舞希、尾関康之)

(アイルランド)

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