スタートアップのベルコールが南欧向け電池セル生産を計画

(EU、フランス)

ブリュッセル発

2020年08月19日

欧州イノベーション・技術機構(EIT)傘下のEITイノエナジー(本部:オランダ・アイントホーフェン)は7月29日、フランスのスタートアップのベルコール(Verkor)、電気大手シュナイダーエレクトリック、建設デベロッパーIDECグループと共同で、欧州で電池セルの生産を目指すと発表したPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EITイノエナジーによれば、ベルコールの初の大規模電池セル生産工場は生産能力16ギガワット(GW)で、2023年の生産開始を目指す。その後、電気自動車(EV)と蓄電システム市場の需要に合わせて、生産能力は50GWまで拡大する予定だ。建設予定地は検討中だが、約16億ユーロの初期投資と、2,000人以上の直接雇用を見込んでいる。

EITイノエナジーは発表の中で、ベルコール工場設立の要因として、欧州で電池需要が急増する中、北欧・中欧地域に比べ、特に南欧地域で電池の供給不足が顕著だとし、フランスだけでも今後10年間で2、3カ所の大規模工場が必要となることが予想されている点を挙げた。こうした状況において、欧州の産業エコシステムは、持続可能で、輸入依存の割合を縮小できる欧州独自のサプライチェーンを設立する必要性に迫られているという。

ベルコールの南欧向け電池供給のための供給拠点の候補地としては、安価な低炭素電力をはじめ、主要な電力供給元で、優れた自動車製造業を持つフランスが有力視されている。EITイノエナジーのディエゴ・パビアCEO(最高経営責任者)は「今回のイニシアチブは、フランスと欧州における、電池システムの原材料から部品・製品、リサイクルに至るサプライチェーンに関わるビジネスをさらに加速させる」とし、また「フランスに電池生産工場を設置することで、中国で生産する場合と比較して二酸化炭素排出量を4分の1に抑制できる」と、フランスへの建設を示唆している。

EITイノエナジーは、欧州バッテリー同盟(EBA)と共同で、欧州に持続可能な電池のバリューチェーン構築を目指しており、ベルコールのパートナーにはEBAも含まれる。EBAは、2017年に欧州委員会によって結成された後、EU域内企業によるEV用電池の生産プロジェクトを相次いで立ち上げている。EBA主導のプロジェクトの中でも、先駆者として扱われているノースボルトは、スウェーデン北部と、ポーランド北部にリチウムイオン電池向け工場の建設を行っている(2020年8月6日記事2018年11月6日記事参照)。

(大中登紀子)

(EU、フランス)

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