米ベイエリア日系企業、「新型コロナ禍」以前から4割超が在宅勤務導入

(米国)

サンフランシスコ発

2020年08月06日

ジェトロと北カリフォルニア商工会議所(JCCNC)は7月29日、2~3月に実施したベイエリア日系企業実態調査の報告書を発表した。

この調査は1992年から隔年で継続的に行っているもので、今回で15回目を数える。本調査報告書は、米国カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリア(注)に所在する日系企業数のほか、郡・都市ごとの産業分布、経営状況、雇用の増減や給与水準、今後のビジネスにおける懸念点などについて得られたアンケート回答を基にまとめられている。

2020年調査で確認できた企業数は1,035社で、調査開始年の1992年以降で過去最多となった。営業利益からみる景況感は好調を維持し、雇用も堅調に推移している。ただ、これらの調査結果は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が出始める前の実績であるため、今後注視が必要だ。同調査の過去の結果をみると、ドットコムバブルの崩壊(2000年3月ごろ~)や金融危機(2007年末~2009年ごろ)後の調査年では、ベイエリアで所在が確認された企業数が減少したり、営業利益の黒字割合が5割を切るなど、景気の動向と連動した変化が確認されている。

カリフォルニア州政府と地方自治体は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、自宅待機令を3月半ばに発令した。本調査は、自宅待機令発令以前に実施されたが、現地従業員向けベネフィット(福利厚⽣)として在宅勤務を導入済みと回答した企業は43.0%に上った(前回2018年調査:24.4%)。そのほかフレックスタイム制導入済みは46.9%(同25.1%)、職場でのランチやスナックなどの無料提供は27.4%(2018年:17.7%)と、働き方に関わるベネフィットを提供する割合が増加した。

ベイエリアを含むカリフォルニア州では自宅待機令は依然解除されておらず、必要不可欠な業務などに従事する人以外は原則、在宅勤務が求められている。また、7月13日以降、州政府の新型コロナウイルスに関する重点監視対象リストに3日以上続けて指定されている郡では、州政府が指定する重要なインフラ部門に該当しない事業のオフィスの閉鎖が命じられている(2020年7月16日記事参照)。

ジェトロがベイエリア所在の日系企業に業務体制の状況を聞くと、「経済再開計画のスケジュールに沿って、7月ごろのオフィスの再開を想定して準備を行ってきたが、(計画が変更され)頓挫した」など、現在も多くの企業が在宅勤務体制を取っている。今後のオフィスの再開は「時期は見通せず、州や郡の命令を注視する」という。また、従業員には、通勤・オフィスでの感染の懸念もあるようだ。他方で、感染拡大前から在宅勤務を導入している企業からは、「新型コロナウイルスと関係なく、引き続き在宅勤務を実施する」といった声も聞かれる。

(注)サンフランシスコ湾を囲む9郡(サンフランシスコ、サンマテオ、サンタクララ、アラメダ、コントラコスタ、ソラノ、ナパ、ソノマ、マリン)を含む地域の総称。本調査のベイエリアの範囲は、JCCNCが所在するサンマテオから100マイル内の26郡としている。

(石橋裕貴、田中三保子)

(米国)

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