ドイツ、EU議長国に就任、欧州の復興に向けた結束に主眼

(EU)

ブリュッセル発

2020年07月02日

ドイツが7月1日、EU理事会(閣僚理事会)における2020年下半期のEU議長国に就任した(2020年6月24日記事参照)。EU議長国は、各EU加盟国が6カ月間の任期を輪番制で担い、同理事会でのEUの活動の継続性を確保するために、各会合で議長を務める。

議長国就任に先立ち、ドイツは6月30日、議長国ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます上で、「欧州の復興を共にPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」と題する実施プログラムを公表した。ドイツは同プログラムにおいて、新型コロナウイルスの感染拡大の克服を優先課題とした上で、(1)長期的な新型コロナウイルス危機の克服および経済復興、(2)より強力で革新的な欧州、(3)公正で持続可能な欧州、(4)欧州の安全保障と共通価値、(5)世界における強い欧州、を重要視している。

EU次期中期予算の早期合意の可否が争点

同プログラムでは新型コロナウイルスの感染拡大における社会的および経済的な影響への対策として、2021~2027年の次期中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)が重要な基礎になるとし、復興基金(2020年5月28日記事参照)を含むMFFの早期の合意を目指す考えを示した。EU予算は、欧州グリーン・ディールに基づく持続可能な経済やデジタル化への移行などのEUの長期戦略目標の達成に向けたものであるべきだとし、新型コロナウイルス対策はそうした移行を加速する好機であるとした。

外交面では、米国をEUの外交・安全保障上の最も緊密なパートナーであると強調し、より包括的かつ意欲的な協力関係を築く意向であるとした。英国のEU離脱に伴う将来関係の交渉においては、EUの現27加盟国の結束を高めながら、合意済みの政治宣言に基づく野心的かつ包括的なパートナーシップの締結に向けて、積極的な役割を果たすとした。中国との関係においては、EUの長期的な利益や共有価値に基づき、全EU機関と全加盟国が団結するべきだとした。その上で、投資協定交渉を始めとして中国とのさらなる協力関係を促進するために、早期の首脳会議の開催を目指すとした。

欧州理事会(EU首脳会議)は7月17~18日に、新型コロナウイルス危機後初の対面形式での特別会合を開催する予定。新型コロナウイルス危機からの復興計画とMFFが主要な議題となる見通しだが、復興基金の財源などをめぐる加盟国間の隔たりは依然大きい。

(吉沼啓介)

(EU)

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