医療用マスク輸出急増、対EU輸出には課題も

(ベトナム)

ホーチミン発

2020年06月22日

ベトナムでは5月、医療用マスクの輸出が急増した。背景には、新型コロナウイルス感染予防の国内需要を満たすために設けられていた輸出制限(2月28日付決議20/NQ-CP)が、4月29日付国会決議60/NQ-CPにより解除され、現在自由に輸出できるようになったことがある(2020年5月11日記事参照)。

ベトナム税関総局の統計(速報値)によると、2020年5月は150社以上の企業により合計1億8,154万枚が輸出された。この数字は、2020年1~4月までの総輸出数1億3,950万枚の約1.3倍に相当する。ベトナムは、1~5月の5カ月間で累計3億2,100万枚を超える医療用マスクを輸出したことになる。なお、公表内容に輸出先国などの詳細情報は含まれていない(注1)。

今後は、ベトナムとEUのFTAであるEVFTAの発効(注2)を8月に控え、対EUの輸出増に期待がかかる。EVFTAのEUの譲許表(Appendix2-A-1)によると、医療用マスクが分類される可能性のあるHS6307.9010(関税率12%)とHS6307.9091(同6.3%)では、それぞれFTA発効により関税が即時撤廃される予定だ。

しかし、2020年6月15日付VNAによると、ベトナムのフェイスマスクを含む医療用品が、ベトナムの品質基準を満たしていてもEUの品質基準を満たさないため、EUに輸出できない事態が生じているという(注3)。EU諸国は、現在も新型コロナウイルス対策のため医療用品を切実に必要としており、多くのベトナム企業は、大量生産に対応可能だが、品質基準は輸出の課題の1つとなっている。

(注1)国会決議60/NQ-CPにより、財務省は輸出者リストと輸出したマスクの枚数を公表することになっている。月1回、前月の輸出枚数を翌月第2週に発表する。

(注2)EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)は、6月8日にベトナム国会で批准された(2020年6月9日記事参照)。

(注3)その他、2020年5月13日付ベトナムインサイダーによると、EUへの輸出にはCEマーク取得が必要だが、一時的にマスクの緊急需要のため同マークなしで輸入が認められるとしても、いずれ厳しくみられるだろうと指摘している。

(小林亜紀)

(ベトナム)

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