西欧では先陣のコロナ追跡アプリが開発され大規模実験開始

(スイス)

ジュネーブ発

2020年06月05日

ローザンヌ連邦工科大学(EPFL)は5月25日、チューリッヒ連邦工科大学大学(ETHZ)と共同で、アップルとグーグルのスマートフォンOSに追加された新機能「ExposureNotification(濃厚接触の可能性を検出するシステム)」を利用した新型コロナウイルス追跡アプリ「SwissCovid」を開発したこと、ならびに実証実験の開始を発表した。この機能を採用するアプリの大規模な実施例としては、スイスが世界で初めてとなる。

新型コロナウイルス感染抑制の観点から、検査で陽性反応を示した1人またはそれ以上の人と長時間近接した場合、そのことを通知してくれるスマートフォンアプリが有用であるとされていた。近接情報が追跡可能となることにより、ユーザーは検査を受けることをはじめ、感染症の拡大を防ぐために予防策を講じることができる。

本アプリでは、陽性者との濃厚接触(2メートル以内の距離で15分以上)があったと判断された場合にユーザーに通知される。このような追跡アプリは、シンガポール、イスラエル、中国などで開発されてきたが、世界でも最も早く導入されたシンガポールでも普及が進んでいないとされている。追跡アプリが実効性を持つためには、幅広いユーザーにインストールしてもらう必要があるため、プライバシー保護とセキュリティ対策が重要な課題となる。そのため、プライバシー保護に関しては、それぞれのユーザーの行動履歴やお互いの近接情報の収集、保存、共有は最小限に限られ、収集されたデータは分散化されて処理される。この仕組みに関しては、EPFLが主導して策定されたDP-3Tプロトコルに沿って開発が進められていた(2020年4月24日記事参照)。

同アプリはこれまで、EPFLやETHZの職員などが連邦参事会(内閣)の依頼を受けてユーザーとなっていたが、今後の実証実験では一般ユーザーにも開放されリアルデータで運用される。

なお、本格運用には、スイス連邦議会は立法が必要と判断しており(2020年5月15日記事参照)、6月の夏会期で関係法律が改正されるのを待つ必要がある。

(和田恭)

(スイス)

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