新型コロナ禍で活躍するインドネシアのスタートアップ

(インドネシア)

ジャカルタ発

2020年06月03日

インドネシアで人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)を活用し、ジャカルタ特別州や地方政府と協業を行いながらスマートシティーの開発などに取り組むqlue(クルー)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのラマ・ラディトゥヤ最高経営責任者(CEO)&ファウンダーに、新型コロナウイルスの影響や事業活動についてヒアリングを実施した(5月28日)。同社の概要については2019年12月26日記事を参照。

(問)「新型コロナウイルス」は貴社にどのような影響を与えたか。

(答)インドネシアのスタートアップにとっては未曽有の経験となった。幸いにも当社は組織の構造上、円滑にオペレーションを変更することができた。感染拡大の初期段階から事業継続計画(BCP)を実行し、社内で新型コロナウイルス・タスクフォースを立ち上げ、従業員への在宅勤務ガイドラインの配布、オンライン上での業務管理などの対応を実施した。新型コロナウイルスを理由に当社のパフォーマンスを落とすことだけは避けたいという思いから、さまざまな手段を講じた。

コロナ禍においては事業戦略を見直し、政府の新型コロナウイルス感染拡大防止策を支援するビジネスモデルに切り替えた。具体的には、IoTを活用した顔認証機能付き体温センサーや、マスクの着用状態や人が密集する場所の探知機能などの開発を行い、国家防災庁(BNPB)主導の新型コロナウイルス政府特別チームや他省庁で当社の技術が活用されている。

図 qlueが提供するサービスのイメージ図(同社ウェブサイトより)

qlueが提供するサービスのイメージ図(同社ウェブサイトより)

(問)コロナ禍での貴社の具体的な活動について。

(答)複数のスタートアップと共同で国内の新型コロナウイルス関連情報を一元的に集約するプラットフォーム「Indonesia Bergerak外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を立ち上げた。政府特別チームや地方政府は、このプラットフォーム用いて市民の違反行動の監視などに活用している。また、一般ユーザー向けアプリ「QlueApp」では、人が密集する場所や支援物資が届かず困窮する市民の場所をアプリユーザーの市民が報告し、アプリ上で市民同士の情報共有が行える機能を実装した。市民からの情報で最も多いのは人が密集する場所に関するものだ。政府特別チームはこのアプリで市民生活を支援している。他方で、政府はアプリ上で虚偽報道(フェイクニュース)が拡散することを懸念しており、当社はAIを活用し市民情報の中からフェイクニュースを特定し、監督省庁の通信情報省に情報共有を実施している。

(問)「Withコロナ(新型コロナウイルスとの共存の時代)、Afterコロナ(コロナ後の世界)」のビジネスチャンスをどう考えているか。

(答)新型コロナウイルスの世界的大流行はさまざまな産業にデジタル革命をもたらしている。これを「ニューノーマル」と呼ぶのだろう。デジタル革命は民間企業だけでなく政府機関にも影響を与えている。従来、デジタルの活用をしてこなかった民間企業や政府機関にも、われわれのサービスを提供するチャンスが拡大した。当社のAI、IoT、ビッグデータ分析を活用した顔認証付きの熱感知センサーなど、安全上のプロトコル順守をサポートするサービスが「ニューノーマル」の中で生かされると考えている。

写真 qlue(クルー)のラマ・ラディトゥヤCEO&ファウンダー(同社提供)

qlue(クルー)のラマ・ラディトゥヤCEO&ファウンダー(同社提供)

(注)ジェトロ・ジャカルタ事務所では、新型コロナウイルスに関するインドネシアの現地スタートアップ企業の状況に関して、これまでもヒアリングを実施している(2020年5月11日記事参照)。

(上野渉)

(インドネシア)

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