現代版「目安箱」開発のスタートアップに聞く

(インドネシア)

ジャカルタ発

2019年12月26日

インドネシアの諸都市では洪水、人口増加に伴う渋滞悪化などさまざまな社会課題が存在する。そうした課題をテクノロジーの活用で解決するスタートアップが近年、インドネシアでは増加している。ジャカルタ特別州やさまざまな政府機関と協力し、「スマートシティ」の実現に協力してきた実績を持つ、同国スタートアップのqlue外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(クルー)のアデティヤ・ジラン・ペルサダ・ビジネス開発マネジャーにヒアリングを行った(12月20日)。

(問)提供しているサービスは。

(答)コアとなる製品は3つ。(1)クルービジョン〔既存の監視カメラと自社で開発した人工知能(AI)システムを組み合わせ、顔認証、車両数のカウント、違法駐車取り締まりなどが可能〕、(2)クルーワーク(一般企業向け業務効率化アプリケーション)、(3)クルーダッシュボード(データ統合、AIによる解析)。これらを組み合わせ、スマートガバナンス、スマートモビリティ、防災などに貢献できるソリューションを提供している。

ジャカルタ特別州においては、市民向けにアプリケーションを開発した。スマートフォンで誰でもダウンロードが可能だ。例えば、市民が道路に空いた穴を見つけた場合、写真を撮影し、アプリケーションを通して州当局に通報。情報は州のコマンドセンターに送られ、当局担当者が確認できる。また、クルービジョンで交通量を確認し、自動的に信号をコントロール、渋滞緩和に貢献している。2014年からサービスを開始し、ユーザーは60万人、市民からの報告は100万件を超える。現在ではマカッサル市(スラウェシ)やクパン市(西ティモール)でも活用されている。

一般企業向けには、クルービジョンで社員の不正行為(禁止区域への立ち入りなど)を見つけ、自動的に警告書を出すシステムなどを開発している。

(問)スマートシティ関連のビジネスを行うようになった経緯は。

(答)ジャカルタ特別州のバスキ・プルナマ前知事(2014~2017年)が、スマートシティ計画を推進した。その際、州内のリアルタイムな情報をコマンドセンターに反映させる計画に当社がサポートを行った。それ以降、地方都市や警察などの公的機関との取引が増加した。地方都市とは、APKASI(アプカシ、全インドネシア地方政府協会)主催のイベントでコネクションをつくり、当社のサービスを紹介し納入につながった。現在ではBtoBビジネスも拡大し、より持続的な経営を目指している。

(問)資金調達の状況は。

(答)スマートシティ向けアプリケーションを開発後、2016年にはPrasetia Dwidharma外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどから1万ドル以上を調達し、2017年はGDPベンチャー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(インドネシア財閥ジャルムグループ傘下)、直近では2019年2月にMDIベンチャーズ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(国営通信事業者テレコムニカシ・インドネシア傘下)からの資金調達に成功した。AIやモノのインターネット(IoT)に強い人材のリクルートなどに資金を活用したい。GDPベンチャーには、長期的な視点で支えてもらっている。

(問)リクルートの面での課題は。

(答)インドネシアのスタートアップの共通の課題は人材不足だ。当社は最高経営責任者(CEO)の人脈を活用し、シリコンバレーなどで働いた経験のあるインドネシア人をヘッドハンティングしている。また、HACKTIV8外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどプログラミングを教える学校と提携し、人材発掘を行っている。

(問)日本企業との連携は。

(答)一部の日本企業は、当社製品を販売するライセンスを保有している。また、都市開発プロジェクトに日本企業と連携するケースもある。

写真 qlueのアデティヤ・ジラン・ペルサダ・ビジネス開発マネジャー(ジェトロ撮影)

qlueのアデティヤ・ジラン・ペルサダ・ビジネス開発マネジャー(ジェトロ撮影)

(上野渉、シファ・ファウジア)

(インドネシア)

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