在米日系企業の7割超で売り上げ減少も、雇用への影響は限定的

(米国)

ニューヨーク発

2020年05月08日

トランプ米国大統領が4月16日に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける経済活動の再開に向けたガイドラインを発表して以降(2020年4月17日記事参照)、多くの州が段階的な企業活動の緩和措置を実施に移すなど、事業環境が変化している。ジェトロは在米日系企業を対象に、生産・販売の状況や雇用への対応、事業活動再開に向けた課題などについて、アンケート調査を4月28~30日に実施した。954社から回答を得た。

調査結果によると、過去1カ月に売り上げが減少した企業の割合は73.9%に上り、前回調査の54.5%から大きく増加した(注)。中でも、売り上げが前年同月比で50%以上減少した企業は33.4%を占めた。生産を中断または通常よりも低い生産をしている企業は80.4%に達した。主な要因として、回答企業の80.3%が国内需要の減少を挙げた。サプライチェーンに影響がみられる企業は8.2%で、米国内のほかメキシコなどからの部品・原材料の調達に遅延が発生している。2020年末ごろまでの米国事業の方向性については、「現状維持」が63.1%で最も多かったが、「縮小」が19.2%だった。「わからない」との回答も11.2%あり、先行き不透明な環境の中で多くの企業が様子見の姿勢を示している。

雇用への対応についての質問では、68.7%の企業が「雇用に影響なし」と回答。「雇用に影響あり」とした企業に対し、業務のなくなった従業員への対応を聞いたところ、雇用契約は継続し健康保険などは維持する「一時無給休職」が48.8%を占め、解雇(レイオフも含む)は24.1%にとどまった。

在宅勤務または事業を中断している企業を対象に、事業活動の再開の条件を聞いたところ、「自宅待機令の解除」を挙げる企業が71.6%で最も多く、「従業員の安全確保の態勢確立」が52.1%で続いた。再開時期は5月中が34.8%で最も多いが、「6月以降」(31.4%)、「わからない(自宅待機令の状況次第を含む)」(31.1%)もそれぞれ3割を超えた。再開に向けた課題では、「従業員の不安の払拭(ふっしょく)」(62.0%)、「マスクなど防護用具、衛生用品の確保」(60.9%)が6割を超え、「感染者が出た場合の対応準備」(56.7%)、「州などの経済再開ガイドラインの明確化」(55.2%)、「(職場内での)社会的距離(6フィート)の確保」(53.6%)もそれぞれ5割を超え、在米日系企業が多くの課題を抱えていることが明らかになった。

アンケート結果の全文は「第3回在米日系企業の新型コロナウイルス対策に関わる緊急・クイックアンケート調査結果PDFファイル(1.8MB)」から閲覧できる。

(注)第1回調査は3月24~26日に実施(2020年3月30日記事参照)。前回の第2回調査は4月6~8日に実施(2020年4月13日記事参照)

(若松勇)

(米国)

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