新型コロナ感染者が1万人超え病床数が逼迫も、段階的な制限緩和を計画

(エジプト)

カイロ発

2020年05月20日

エジプトでは5月12日、新型コロナウイルス累積感染者数が1万人を超えた。17日時点で1万2,229人、回復は3,172人、死者は630人となっている。夜間外出制限や経済活動・行政サービスの自粛は段階的に緩和される中、4月24日から1カ月間のラマダン(イスラム教の断食月)が始まり、日没後の断食明けの食事や買い物などの外出が増えた(2020年4月27日記事参照)。ラマダン前の4月23日時点の感染者数は3,892人だったが、急増している。モスタファ・マドゥーリー首相はラマダン明けの約1週間は現在午後9時~翌日午前6時の夜間外出禁止について、開始時間を17時に早め、さらにショッピングモールなどの小売店や公園、公共交通機関は閉鎖すると発表した。

保健・人口省によると、5月5日に隔離病床数が満室となり、ホテルでも隔離を実施すると発表した。現地報道によれば、医療スタッフも不足しつつある、という。シャルキーア県内に設置された隔離病棟で従事してきた医師が新型コロナウイルスに感染し、死亡したケースも発生している。現状の公表値では感染者に対する死亡者の割合は約5%で、欧州の水準と比べると低いが、今後、病床数不足や医療崩壊による死亡率の増加の懸念がある。こうした事態も踏まえ、エジプト医師会はより厳しい規制の導入、国民への更なる普及啓蒙、医療環境の整備について政府に提言しており、ラマダン終了時(5月24日予定)に政府が声明を出す予定だ。

現地報道によると、保健・人口省は、第1段階として2週間程度、新規感染が減少するまでは出勤率など規制を強化し、その後の第2段階は4週間程度、出勤率など規制を緩和して状況把握し、第3段階としてWHOのリスク低下宣言まで経済活動を通常に戻しつつ衛生管理を徹底する継続的な規制を設定する考えだ。職場での人数制限は交代勤務や在宅勤務により、第1段階で30%出勤可能、第2段階では製造業などは50%、第3段階は一部業種を除いて100%可能とする。一方で、レストラン、映画館、劇場、カフェ、ジムなど感染リスクの高いとされる業種は第3段階規制終了まで営業禁止が要請される。これらの措置の時期や規制内容については、感染状況によっては変更される見込み。

国際線が原則運航を停止している中、エジプト政府は米国や湾岸協力会議(GCC)諸国からのエジプト人の帰国支援を開始した。保健・人口省は帰国者に対し指定施設での2週間の隔離措置をとり、帰国者による感染拡大を防ぐ考えだ。エジプトでは新型コロナに関する経済対策を実施しているものの(2020年4月7日記事参照)、経済成長の減速は避けるのは難しい(2020年5月18日記事参照)。2020年のGDP成長率について、欧州復興開発銀行(EBRD)は5月時点の報告で0.5%成長と予測する。

(井澤壌士)

(エジプト)

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