中銀が政策金利を5.5%に、8会合連続の利下げ

(メキシコ)

メキシコ発

2020年05月18日

メキシコ中央銀行は5月14日、金融政策決定会合を開催し、理事会メンバー5人の全員一致によって政策金利を50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げ、5.5%とすると発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。利下げは8会合連続となった。5.5%は3年半ぶり。直近では4月21日の同会合で6.5%から6.0%に引き下げられていた(2020年4月23日記事参照)。

中銀は、新型コロナウイルスの感染拡大よる急激な経済活動の縮小が最大の要因と発表した。国立統計地理情報院(INEGI)が4月30日に発表した2020年第1四半期の実質GDP成長率の速報値では、季節調整済み前期比1.55%減となり、年率換算をした場合は6.0%減と、大幅な下落だった(2020年5月8日記事参照)。また中銀は、世界的な景気減退がいつまで続くかは予測が困難でありながらも、メキシコにおいて第2四半期には更なる景気悪化と雇用喪失が確実視されており、必要な金融政策を実施する必要があるとした。他方、消費者物価指数は2020年3月が0.05%減、4月が1.01%減と前月比で2カ月連続下落しており、4月の前年同月比上昇率は2.15%と中銀のインフレ収束ターゲットを下回っている。この状況からインフレを懸念することなく、金利を引き下げることができたものとみられる。ちなみに、2020年4月の農作物や公共料金などを除いて構成されるコアインフレ率は前年同月比3.50%増だった。一方、その他の非コアインフレ率は1.96%減だった。2月以降の急激な原油価格の下落に連動してガソリンなど燃料価格が下がったことが影響している。4月末時点のメキシコペソの対ドルレート(1ドル=23.99ペソ)は、2020年初比で22.3%の切り下げとなっていることから、今後は輸入品の小売価格にも影響するものとみられる。

また中銀はプレスリリースで、他国が金融財政政策に基づき実施した連続した利下げも、今回の利下げの背景と説明している。3月に米国フェデラル・ファンド誘導金利は0.00~0.25%に引き下げられ、新興国でも2月以降の利下げが進み、ブラジルは3.00%、南アフリカ共和国は4.25%、インドネシアは4.50%などとなっている。

さらに、社会保険庁(IMSS)に事業者が申告している正規従業員の雇用数は、観光業を中心に3月に前月比13万2,000人、4月に55万5,000人減少し、今後も家計所得は減少すると予想されている。冷え込んだ消費を活性化させるためにも、消費者金融の活性化につながる利下げが必要となる。メキシコ大手商業銀行のシテイ・バナメックスとBBVAは、ともに2020年末の政策金利を4.75%と予測している。

(志賀大祐)

(メキシコ)

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