第1四半期GDP成長率、前期比年率でマイナス6.0%の大幅落ち込み

(メキシコ)

メキシコ発

2020年05月08日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は4月30日、2020年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率の速報値を発表した。季節調整済み前期比の成長率はマイナス1.55%で、2019年第2四半期(4~6月)から4期連続のマイナス成長となり、2009年第1四半期のマイナス5.09%以来となる11年ぶりの大幅下落となった。前期比成長率を日本や米国のように年率換算するとマイナス6.0%となるため、米国と比べても大きな落ち込みといえる。GDPの内訳をみると、農林水産業は0.49%増だったが、鉱工業が1.37%減、サービス業が1.40%減とともにマイナスだった。前年同期比の成長率はマイナス2.4%となっており、内訳としては前期比と同様、農林水産業が1.2%増だったものの、鉱工業が3.8%減、サービス業は1.4%減と低迷している。なお、確定値は5月26日に発表される。

メキシコにおいては、新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)以前から、マイナス成長が続いていた。主な要因は、産業別にみると、建設業と鉱業の低迷に加え、2019年後半以降の自動車産業など輸出製造業の減速だ。需要面でみると、現政権の政策不透明感から、民間投資が減少した影響が大きい。建設業は、政権交代の初年で公共事業の着手が遅れたことや、現政権の緊縮財政によるエネルギー分野を除く公的投資の停滞が影響した。鉱業は、特に前政権から続く石油生産の減退が大きく響いていた。こうした中でパンデミックが発生し、厳しい状況に置かれている。メキシコの主要産業である自動車産業では、3月に入ると新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、販売・生産・輸出のいずれも大きく落ち込んでいる(2020年4月9日記事参照)。

メキシコ政府が新型コロナウイルスの感染拡大対策を本格的に講じたのは3月中旬以降なため、それらの影響が顕著に数字に反映されるのは第2四半期(4~6月)以降となり、今後はさらに厳しい結果となることが予測される。大蔵公債省は2020年の経済成長率見通しをマイナス2.9%としているが、中央銀行が国内外38のシンクタンクに実施したアンケート調査によると、2020年のGDP成長率見通し平均値はマイナス7.27%となっている。

(中井健太)

(メキシコ)

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