自動車部品工業会が新型コロナウイルス感染拡大対策下でも事業の継続を要請

(メキシコ)

メキシコ発

2020年04月03日

3月30日に政府が「不可抗力の衛生上の非常事態」を宣言し、必要不可欠な業種以外の操業を禁止した(2020年4月1日記事参照)ことを受け、メキシコ自動車部品工業会(INA)は3月31日にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領とアルフォンソ・ロモ大統領府長官、4月1日にグラシエラ・マルケス経済相に書簡を送り、以下の理由から自動車部品産業を国の経済にとって操業継続が不可欠な業種に認定することを要請した。また、約1,200カ所の事業所で87万人を雇用し、990億ドルの生産活動を行う重要な産業であることを強調している。

  1. 北米の自動車産業に向けて輸出製造を行う現行北米自由貿易協定(NAFTA)の戦略的産業であり、(メキシコ側の製造停止により)新NAFTA(USMCA)の約束事を守らないことで与える悪影響の責任をメキシコの自動車部品産業が負うことはできないこと
  2. 救急車などの衛生危機に対処する自動車に用いられる部品を製造する産業としての重要性
  3. 緊急時に家族や政府関係者や救援物資を輸送する自動車の補修部品の供給体制を維持する必要性
  4. 国内だけでなく、米国やカナダにも供給される自動車部品の製造に従事する高度に訓練された労働力を維持することの重要性

なお、マルケス経済相には併せて、自動車部品産業への救済策の導入も要請しており、サプライチェーンの困難に直面する企業への助成金、付加価値税(IVA)の還付迅速化およびユニバーサル相殺(2019年1月18日記事参照)の復活、法人税の予定納税および従業員の個人所得税の源泉納税の一時停止、2019年度確定申告の延期、雇用や投資に対する一時的な税制優遇策の導入、ガソリン・ディーゼルに対する生産サービス特別税(IEPS)の課税停止、開発銀行の低利融資、福利厚生費の100%損金算入(注)、連邦税や社会保険負担金の分割払いや繰り延べ、雇用維持のための補助金の支給、などを求めている。

操業継続の判断に苦しむ

3月31日付保健省令による企業活動の原則停止措置は、多くの企業の混乱を招いている。同省令の第1条IIのc)は、経済の根本的部門の活動として、いわゆる「操業継続が不可欠な業種」が列挙されているが、「一旦停止すると事業存続のために取り返しのつかない悪影響が及ぶ活動」が何を指すのか、あるいは、不可欠な業種に部品や素材を供給する周辺産業はどうなるのかといった疑問は残る。複数の州政府から得た情報によると、保健省令の法的拘束力に疑問を抱き、現状で操業を停止していない企業も多いとのことだが、3月末までは操業を続けていた進出日系企業の中にも、同省令の公布を受けて操業の停止を判断したところが複数ある。

(注)現行所得税法では、個人所得税の非課税所得となる福利厚生費のうち、企業は53%までしか損金算入できない。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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