税務が改定、連邦税の過納額の相殺対象を同一税目に限定

(メキシコ)

メキシコ発

2019年01月18日

メキシコ政府は2018年12月28日、2019年歳入法を官報公示し、2019年の税務について複数の改定が盛り込まれた。その中でも、企業活動に影響を与えるのが、超過税額の相殺措置の制限だ。

メキシコでは、所得税(ISR)や付加価値税(IVA)などの連邦税を過納した場合、国税庁(SAT)に過納額を申告した後、還付や相殺ができる。相殺の場合は、過納額が発生している税金以外の他の連邦税の支払いとの相殺も可能で、さらに、第三者から源泉して納める税額と相殺することも可能だった(注)。

2019年歳入法の第25条VI項は相殺の対象を同一税目、かつ納税者自身に支払い義務のある税額に限定した。IVAであれば、IVAの月次納税額との相殺しか認められず、ISRの月次予定納税額と相殺できなくなる。さらに、第三者から源泉してSATに支払う税額との相殺もできない。

SATは1月7日、2018年度の税務細則(RMF2018)の第6次改定案をウェブサイトで事前公示し、2018年度に発生した過納額については、他の連邦税との相殺を認めることとした(RMF2018第2.3.19号)。憲法で定められている法の不遡及(ふそきゅう)の原則を守るためだ。ただし、同細則改定案では、2018年度に発生した過納額であっても、第三者から源泉して支払う税額との相殺は認めておらず、企業がIVAの過納額を、従業員から源泉した個人所得税(ISR)の月次納税額と相殺すると違反になる。

IVAの過払い額の回収の遅れを懸念

今回の改定で、進出企業の過払いIVAの回収に悪影響が出ることが懸念される。設備投資を行う企業、輸出比率が高い企業などはIVAの過払い額が大きくなり、相殺や還付を通じて回収する必要が生じる。今までは相殺して残った部分のみを還付申請することで対応できたが、今後は相殺対象となる税額が少なくなることにより、還付申請しないと回収できない可能性が高まる。事後通知のみで済む相殺とは異なり、還付申請は多様な書類を用意する必要があり、原則40営業日を経て還付される。ただし、書類不備があれば、40営業日で還付されず、さらに税務調査の対象となれば、1年以上還付されないことも多く、企業のキャッシュフロー負担は大きい。相殺の制限により、納税者からの還付申請件数が増加すれば、SATの行政処理能力にも大きな負荷が生じ、還付が遅れる可能性がさらに高まる。

(注)ただし、輸入申告時に税関で支払う税金との相殺は不可能。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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