経済界が新型コロナの影響緩和のための緊急税制対策を要請

(メキシコ)

メキシコ発

2020年04月02日

日本の経団連に相当するメキシコの企業家調整評議会(CCE)は3月31日、政府が新型コロナウイルスの感染抑制のために経済活動の制限措置を強化した(2020年4月1日記事参照)のを受け、企業の資金流動性を確保して雇用を維持するために、以下の緊急税制措置を導入することを要請した。求めているのは減税ではなく、キャッシュフロー確保のための支払い繰り延べに相当する。

  1. 確定申告期限(法人3月31日、個人4月30日)の6カ月間延期、および2019年度納税額の延滞金利無しの分割払い(12回払い)
  2. 2020年度の法人税(ISR)の月次予定納税の減額(確定申告時に調整)
  3. 2020年度納税額の12カ月分割払い
  4. 2020年度を通じて適用可能な付加価値税(IVA)の還付迅速化手続きの導入
  5. 2020年度に限り、他の連邦税からIVA仮払い残高の相殺を認めるユニバーサル相殺の復活(2019年1月18日記事参照

CCEは、メキシコも加盟するOECDが経済危機の深刻化を防ぐためにメキシコ政府に対し、a.納税の繰り延べ、または免除、b.予定納税の廃止、または企業の現実に合わせた納税額の調整、c.IVA還付手続きの簡素化・明確化、d.輸入に伴う租税公課の支払い繰り延べ、e.社会保険負担金の支払い繰り延べなどを提言していることを挙げ、OECDとG20が発表した税源浸食と利益移転(BEPS)行動計画の内容を2020年度税制改正に反映した大蔵公債省および国税庁(SAT)に対し、再びOECDの提言に耳を傾けるべきと主張している。

大統領は税制措置を否定、ハリスコ州知事は再考を要請

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は、経済界のこれらの要請に耳を貸すことはしないようだ。AMLO氏は4月1日の定例早朝記者会見において、政府が助けるべきは貧困層など弱者だとし、企業の納税を免除することは国の徴税額を少なくし、老人や障害児、農民などを支援する財源をなくすことを意味すると語った。さらに、「免税措置は過去の新自由主義的政権下で行われた特権階級のみを利する悪しき慣習」だと従来からの持論を展開した。

これに対し、野党・市民運動(MC)に所属するハリスコ州のエンリケ・アルファロ知事は、偏った固定観念から企業を救済しないのは連邦政府の大きな誤りであり、危機の中で雇用を確保するために企業家の声に耳を傾けるべきだとし、国家レベルでどのような方法で企業を助けるのかを考えるべきだと主張している(「レフォルマ」紙4月1日)。連邦政府とは対照的に、州政府は税制に関する企業支援にいち早く乗り出している。全国商業サービス観光会議所連合会(CONCANACO-Servitur)によると、3月30日時点で14州が、企業の給与総額(ペイロール)を課税基準とした事業税である給与税(ISN)の繰り延べ、あるいは減額措置を導入している。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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