欧州自動車工業会、新型コロナウイルス危機の影響を試算し公表

(EU)

ブリュッセル発

2020年03月31日

欧州自動車工業会(ACEA)は 3月30日、新型コロナウイルス関連の問題に伴う欧州の自動車生産ラインの稼働停止(2020年3月24日記事参照)による自動車生産や雇用への直接的な影響を定量的に試算し、その結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。これによれば、EUおよび英国における自動車(乗用車および商用車)の生産台数は約120万台が減少、雇用に影響を受ける従業員数は約109万人としている。

欧州最大の自動車産業を抱えるドイツへの影響深刻

ACEAは、欧州の自動車生産に従事する直接作業者の総数を260万人としており、この4割を超える数の労働者の雇用に影響が出ると指摘した。国別で見ると、生産・雇用への影響が大きい上位の国は次の通りだが、ともにドイツへの影響が最大で、生産台数は約36万台減少し、57万人の雇用に影響が及ぶと見られている。

【生産台数への影響、減少数(稼働停止期間)】

  • ドイツ:35万9,287台(18日間)
  • スペイン:23万7,806台(19日間)
  • フランス:10万3,280台(15日間)
  • 英国:8万8,963台(15日間)
  • イタリア:7万8,033台(20日間)
  • チェコ:7万7,740台(13日間)

【雇用への影響(影響を受ける従業員数)】

  • ドイツ:56万8,518人
  • フランス:9万人
  • イタリア:6万9,312人
  • スウェーデン:6万7,000人
  • 英国:6万5,455人
  • スペイン:6万人

欧州自動車運輸連盟(ECG)は3月23日に、新型コロナウイルス関連の問題に伴う欧州自動車産業の現状について、その分析と今後の見通し(2020年3月26日記事参照)を明らかにしており、この中で欧州での自動車生産ラインの稼働停止の要因は、欧州諸国による都市封鎖および人の移動制限による国境措置にあると指摘。商品・貨物の輸送については制限されていないにも関わらず、EU域内での労働力不足の問題で、生産ラインの稼働停止に陥ったと問題提起していた。

これを受け、欧州委員会は3月30日、新型コロナウイルス危機対策のため、加盟国が不要不急の渡航を一時的に制限する場合の実務ガイダンスPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表。「入国拒否する基準」「渡航制限の免除対象の範囲(EU市民の本国帰還や医療従事者、越境通勤者などは免除)」「国境審査手続き」などについての実務運用ルールなどを明確化する方針を打ち出している。

新型コロナウイルスの感染拡大から、フランス自動車大手PSAグループは3月16日に、欧州7カ国(フランス、スペイン、ドイツ、英国、ポルトガル、ポーランド、スロバキア)にある生産拠点の操業を3月27日まで停止すると発表したが、同グループは同日から欧州各国における生産を徐々に再開する意向を示した。労働組合に対しては、体温測定、マスク着用、社会的距離を保持しながらの勤務といった従業員の安全対策を配慮した提案を行っている。

しかし、労働組合や従業員の反発も想定され、予定通り再開できるかは不透明だ。上記のACEAの欧州自動車産業への影響の見通しも、稼働停止期間を平均15日程度とする前提があり、この期間が長期化した場合、生産・雇用や経営への影響(2020年3月27日記事参照)がさらに拡大するおそれも否定できない。

(前田篤穂)

(EU)

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