欧州自動車工業会、新型コロナウイルス問題対策のための財政支援を要請

(EU)

ブリュッセル発

2020年03月24日

欧州自動車工業会(ACEA)は3月20日、新型コロナウイルスの問題により、同産業が「前例のない危機」に直面しているとの声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表。同団体会員企業のほとんどが需要急落、(部品)供給不足、政府による措置などにより、生産ライン停止に追い込まれており、必要な人手も従業員の感染や検疫による隔離に直面している企業もあるという。欧州の自動車産業全体での雇用危機であり、EUおよび加盟各国レベルでの流動性支援が必要だとした。

欧州を代表する産業を機能停止に追い込んだ新型コロナウイルス

ACEAによると、EU域内には車両の組立・製造拠点が229カ所あり、生産部門だけでも260万人を直接雇用しているという。また、自動車産業全体での間接雇用まで含めると1,380万人の雇用を生んでいるとして、産業としての重要性を強調した。この他ACEAは、部品の生産と共有および車両ビジネスネットワークの維持は、救急車両など公共(医療)サービスの業務にも不可欠だとした。ACEAは今回の声明で、①企業の事業上の損害を回避するための具体的な措置、続いて②同産業の回復のための景気刺激策の2点について、欧州委員会委員長との緊急の対話が必要だと強く訴えた。

欧州での自動車生産事業を展開する日系企業の操業停止の動きも顕著で、トヨタ自動車や(2020年3月18日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます付)、日産自動車(2020年3月20日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます付)は、声明を出し、欧州地域における生産拠点の稼働停止などを表明している。

また、欧州自動車搬送事業大手のUECC(本社:ノルウェー・オスロ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は2020年3月20日付の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、新型コロナウイルス問題に伴い、同社顧客である欧州自動車産業の生産ラインはほぼ全て停止、あるいは今後数日中に停止するとの見通しを示した。再開の見通しは不明だが、同社としては相当の時間を要するとの見方を示し、事態が長期化することを示唆した。同社としては十分な荷量が確保される場合、サービス(運航)を継続するとしたが、減便は避けられない上、現時点で運航日程を示すことも難しいとした。

他方、デジタルヨーロッパ(欧州情報通信民生電子技術産業協会)は3月20日付の声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(リンク)で、同産業に対する新型コロナウイルス問題の影響を会員企業などから聴き取って次の通りまとめた。

  • オンライン販売主体の企業の収益に対する打撃は相対的に少ない
  • 従業員の業務のデジタル化が進んでいる企業に対する短期的打撃は相対的に少ない
  • 中国、イタリアなどでの生産ライン閉鎖の影響はハードウエア機器の供給の面で大きな打撃
  • 市場には先行き不透明感が強く、需要低迷は深刻、新規受注契約はない
  • 新型コロナウイルス問題に伴う契約不履行の行方(債務なのか、不可抗力(免責)と認められるのか)をめぐり、市場に混乱
  • 加盟国による企業支援パッケージの多くが中小企業を対象とするため、(支援を得られない)中堅ハイテク企業から頭脳流出が起きるリスクがある
  • 情報通信機器の販売店閉鎖で必要な機器調達ができない、情報通信のメインテナンス要員が移動の制約を受けているなどの事情で、必ずしもリモートでの業務継続も円滑ではない

(前田篤穂)

(EU)

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