経済界が新型コロナの緊急対策を政府に要請

(メキシコ)

メキシコ発

2020年03月25日

日本経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)は3月19日、新型コロナウイルスの影響を緩和するための緊急対策を政府に要請した。新型コロナウイルスによる投資激減を回避するとともに、中小企業を支援し、2,100万人の民間部門正規雇用を守る対策だとしている(CCEプレスリリース3月19日付)。具体的には以下を採用するよう提言している。

  1. 金融市場の流動性を確保する
  2. 財政収支均衡は保持しつつも、プライマリー収支のGDP比1%の黒字目標は放棄、収支ぎりぎりまで経済活性化のために支出する
  3. 民間部門と政府のインフラ投資に関する合意内容を強化し、2月下旬に発表される予定だった民間部門の参画を認めるエネルギー部門投資計画を速やかに発表する
  4. 地域限定ではなく全国で投資の即時償却を自動的に認める
  5. 雇用確保のため、政府補助で少なくとも最低賃金相当の給与を休業中の従業員に支給する
  6. 法の支配を尊重し、着手済みの投資プロジェクトを「大衆意見公募」などの受け入れ難い手段で中止(2018年11月1日記事参照)しない
  7. 政府(連邦、州、市町村)および国営企業(石油公社PEMEXなど)がサプライヤーへの支払いを速やかに行う
  8. 付加価値税(IVA)の還付を迅速化し、2019年以降禁止されたIVA過払い額の他の連邦税納税額との相殺(2019年1月18日記事参照)を認める
  9. 政労使が参加する経済危機対策チームを創設する
  10. 最も悪影響を被った産業に対する特別信用保証プログラムを導入する

流動性支援は継続も、税制インセンティブを否定

民間部門の要請に対し、政府が現時点で応えているのは、1)の金融市場における流動性の確保だけだ。金融当局は3月18日、下げ止まらないペソの対ドル為替相場を憂慮し、総額20億ドルのノンデリバラブルフォワード(NDF)入札と総額400億ペソ相当の国債交換(2020年3月17日記事参照)を再度発表した。NDF入札は同日、国際交換は翌19日に実施された。さらに、中央銀行は3月19日に、米国連邦準備制度理事会(FRB)との間で総額600億ドルの通貨スワップ協定を締結したと発表した。しかし、19日のペソ相場終値は1ドル24.424ペソと、前日終値比2.0%安と下げ止まっていない。

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は3月19日の早朝記者会見において、68歳以上の全高齢者に対する一律年金を通常の2カ月分に加えてさらに2カ月分前倒しで支給する支援策を発表したが、企業への税制インセンティブ付与は否定した。新型コロナウイルスに対して最も脆弱な高齢者の支援を優先し、減税は考慮していないものの、危機で税収が減少しても増税することはないとしている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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