次期大統領が新空港建設中止を発表、強い批判相次ぐ

(メキシコ)

メキシコ発

2018年11月01日

12月1日に就任するアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)次期大統領は10月29日、前日夜のメキシコ市国際空港に関する意見公募の結果(2018年11月1日記事参照)を受け、新空港建設を中止し、現空港の利用継続とサンタルシア空軍基地の拡張、メキシコ州のトルーカ国際空港の利用促進で対応することを発表した。同次期大統領は3年間で現空港の飽和問題を解決できると語ったが、新空港の建設中止には産業界から強い反対意見が出ている。

日本経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)は「国家が契約をほごにし、現行の法的枠組みを崩壊させることで、国際市場における投資家や市民の不安をかき立てる深刻なニュースだ」と批判した。さらに、国民的な議論を深め、市民の声を政策立案に役立てることの重要性については尊重するものの、今回の意見公募は現行の法的枠組みを尊重しておらず、公平性、中立性、代表性も欠けているとし、20年以上にわたり調査して決定した空港建設という複雑で技術的な問題を伴う国の決定を覆すには、十分な根拠になり得ないと主張している(「CCE」プレスリリース10月29日)。また、CCEのフアン・パブロ・カスタニョン会長は、空港建設の中止により1,200億~1,400憶ペソ(約6,720億~7,840億円、1ペソ=約5.6円)が必要になり、4万6,000人の雇用が失われる、とも語った(「レフォルマ」紙10月30日)。

世論調査会社ミトフスキーが意見公募直前の10月19~21日に実施した調査では、新空港の建設継続の支持率は42.6%で、サンタルシア空軍基地の支持率29.8%を大きく上回っていた。対象者数は1,000人で、次期大統領陣営が収集した100万人超の回答数より少ないものの、全ての経済・社会階層と地域を網羅するようサンプルを抽出しているため信頼性は高い。

現政権、11月末まで新空港建設を継続

次期大統領陣営の発表にかかわらず、工事は11月末までは続くようだ。メキシコ市空港公団(GACM)のフランシスコ・パティーニョ総裁は「現政権はプロジェクト実現に向けて取り交わした約束を、政権最後の日まで尊重する」とし、「GACMに与えられたコンセッションが有効な間は、その責務を全うする必要がある」とし、建設を途中でやめることは法的な制裁の対象になることも示唆した(「レフォルマ」紙10月30日)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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