欧州委、新型コロナウイルスの経済対策を発表、防護用品の輸出規制も

(EU)

ブリュッセル発

2020年03月18日

欧州委員会は、感染拡大が続く新型コロナウイルスへの対策強化に向けて危機管理担当と保健衛生担当、内務担当、運輸担当、経済担当の5名の委員からなる「新型コロナウイルス対策本部」を設置し、その後さらに体制を強化しながら対応を続けている。特に「医療」〔欧州疾病予防管理センター(ECDC)による情報収集と発信、防護器具の共同調達、研究開発支援(2020年2月4日付記事参照)など〕と「モビリティ」(国境での衛生検査強化のために加盟国が採り得る施策や短期滞在ビザ交付・シェンゲン圏入境拒否の可能性の確認)、「経済」〔経済・貿易・輸送等産業への影響の監視、安定成長協定(加盟国の財政規律枠組み)の活用、観光産業支援など〕が主要分野となる。

防護用品の供給確保のため、EUレベルで協調

特に「経済」面について欧州委は3月13日に協調対応策を発表した。欧州委は新型コロナウイルスのパンデミックによる影響を緩和するためあらゆる手段を取るとして、特に次の4点を挙げた。

  • 単一市場と生産・流通体制の完全性の維持による、医療システムに必要な供給体制の確保
  • 収入と雇用への過度な影響を排除し、危機の影響の恒常化を避けるための人々への支援
  • 企業への支援と、経済を支え続ける金融部門の流動性確保
  • 国家援助と安定成長協定の柔軟性の最大限の活用による加盟国の協調と断固とした措置

国家援助ルールに関して欧州委は、加盟国は給与補助や、法人税・付加価値税・社会保障負担の支払いの一時停止、消費者支援、企業の流動性不足の対策支援などを実施できると述べた。特にイタリアについては、欧州連合の機能に関する条約(TFEU)にもとづく追加的な救済措置が認められる性質・規模の深刻な混乱だとした。

安定成長協定に関しては、新型コロナウイルスの感染拡大は「政府が制御不能な不測の事態」だとし、医療や企業・労働者救済など感染対策のための特別支出が可能だと指摘。また、加盟国経済の大きな落ち込みが発生した場合には加盟国の財政健全化目標の調整を推奨する意向を示した上で、ユーロ圏やEU全体に深刻な経済の落ち込みが発生した場合には、支援を一層強化するため財政健全化に関する理事会勧告を一時、適用停止する準備があるとした。

単一市場については、防護用品(マスク、バイザー、防護服など)や医薬品の生産・貯蔵・流通・適切な利用の確保には、物品の自由な移動を妨げる加盟国の一方的な施策より、開かれた透明な施策が重要と指摘。欧州委は、供給確保のための管理措置の適切な導入に関するガイダンスを加盟国に提供し、防護用品などの共同調達を開始、CEマークが添付されていない防護用品に関する勧告の作成を行った。特に、防護用品の域外への輸出については6週間の間、加盟国の許可制度を導入する実施規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを15日に官報掲載・即日適用開始した。また、航空サービス事業者に対する発着枠の利用義務を一時的に緩和し(2020年3月12日付記事参照)、陸上の国境における必需品の流通を確保するために加盟国と取り組んでいる。

欧州委はこの他、10億ユーロをEU予算から欧州投資基金に割り当てることによる金融機関から中小・中堅企業への流動性提供の促進、時短勤務制度や職業研修プログラムなどを通じた加盟国の失業対策支援などを進める意向を示しているほか、コロナ対策投資イニシアチブ(2020年3月13日付記事参照)などを提案している。

(村岡有)

(EU)

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