新型コロナウイルス感染拡大で日系駐在員や家族の生活に支障も

(フィリピン)

マニラ発

2020年03月27日

ルソン島全体に外出禁止令を発出し、公共交通機関の停止を決定した3月16日のドゥテルテ大統領の発表(2020年3月19日記事参照)から10日が経過し、日系駐在員や家族の生活に少なからぬ支障が生じている。

翌17日にはマニラ首都圏の多くのデパート、ショッピングモールが閉鎖。ごく限られたスーパー、食品雑貨店、ドラッグストアが営業を続けるも、感染拡大の防止策として入店できる人数を限定したため長蛇の列ができた。

買いだめによる生活必需品の品切れを防止するために貿易産業省(DTI)は3月19日、アルコール消毒液、トイレットペーパー、マスク、国産インスタントヌードル、国産缶詰商品、ミネラルウォーターなどについて、一度の買い物で購入できる個数の上限を設定。また、政府が食品や医薬品など生活必需品の国内外物流は止めないという方針を示したこともあり、品切れは3月25日時点で確認されていない。

一方で、各自治体や国家警察による外出制限の取締りは日に日に厳しくなっている。日本人駐在員やその家族が多く居住するマカティ市内のコンドミニアムでは、自治体の方針により、外出にあたって事前にコンドミニアムが許可証を発給する制度が、3月23日ごろから開始されている(注:各コンドミニアムにより開始日が異なる)。許可証を入手できるのは1家族に1人だけで、有効期限は1日だけであるため、外出の用がある場合は都度コンドミニアムに申請する必要がある。当該許可証がないと入店を許可しないスーパーも存在する。

マニラ首都圏の日本人駐在員や家族の多くが利用する主要な病院であるセント・ルークス病院およびマカティ・メディカル・センターは3月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の受け入れの制限を発表。日本人会診療所も3月18日以降の休診を発表しており、日本人駐在員や家族が頼ることが可能な医療サービスが十分に提供されない状況だ。

ジェトロとフィリピン日本人商工会議所(JCCIPI)は3月20~24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるビジネスへの影響に関する緊急アンケートを共同で実施したところ、28.2%の日系企業が日本人スタッフの一時帰国措置(全員または一部)をとっていると回答した。フィリピン政府は3月17日、3月20日以降はルソン島の国際空港からフィリピンを出国することを禁止すると発表したが、その後すぐに撤回。同発表を受け、一部の日系企業は、3月19日までの限られた航空券を確保し、駐在員や帯同家族を一時的に日本に帰国させていた。

フィリピン外務省は3月19日、国籍問わず外国人への査証(ビザ)の新規発給停止と既に発給された全てのビザを無効とみなすことを発表(2020年3月25日記事参照)。発給済みビザを保有する外国人のうち、既にフィリピン国内にいる外国人のビザは引き続き有効であるとしたものの、日本に一時的に帰国している駐在員や家族のビザの取り扱いについて、3月25日時点でフィリピン政府は具体的な方針を示していない。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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