ルソン島全体に自宅待機命令、出国制限や貨物トラック通行証取得義務はその後撤回

(フィリピン)

マニラ発

2020年03月19日

ドゥテルテ大統領は3月16日に記者会見を開き、新型コロナウイルス(COVID-19)のフィリピン国内の感染拡大状況を踏まえ、国の人口の半数以上を占めるルソン島全体に外出禁止令を発出し、公共交通機関の停止を行うことを発表した。

ドゥテルテ大統領は3月12日、マニラ首都圏を3月15日から4月14日まで封鎖し、陸路、空路、海路でのマニラ首都圏内外の往来を禁止すると発表(2020年3月13日記事参照)したが、これをルソン島全体に拡大したうえで、外出禁止と公共交通機関の停止というさらに厳しい措置を講じたかたちだ。

ドゥテルテ大統領はさらに、公的部門と民間部門の双方に自宅勤務を求め、食糧や医薬品など必要不可欠な物資を購入するための外出以外は許可しないとした。3月12日のマニラ首都圏の封鎖発表を受け、既に従業員の在宅勤務を開始した日系企業も存在するが、今回の発表を受けて在宅勤務を開始する日系企業の動きが加速するとみられる。

フィリピンからの出国制限、貨物トラック通行証取得義務を撤回

ノグラレス大統領府長官は3月17日、3月20日以降はルソン島の国際空港からフィリピンを出国することを禁止すると発表したが、その後すぐに撤回した。同発表を受け、一部の日系企業の中では、駐在員や帯同家族を一時的に日本に帰国させるべく、3月19日までの限られた航空券の確保に追われるなど混乱が生じていた。

フィリピン港湾庁(PPA)は3月17日、マニラ首都圏封鎖措置のルソン島全域への拡大を受け、マニラ港で輸出入貨物を運搬するトラックがマニラ首都圏の内外を往来する場合に、3月15日以降課していた貨物車通行許可証(CEWP:Cargo Entry/Withdrawal Permit)の事前取得義務(2020年3月17日記事参照)を、3月17日付けで撤回すると発表した。ルソン島全体の生活必需品のサプライチェーンを維持し、市民に円滑に物資を供給するために撤回されたかたちだ。

PPAはさらに、貨物船の着岸のため港は開かれるとするが、船員の下船は認めず、保健省検疫局の課す条件に従うとした。さらに、船荷証券、運送状、配送指示書/納品書、コンテナ受渡証(以上、電子システム含む)が、出入港時に当局が検査・認証を行う対象書類となるとした。また、旅客船の入港は認めないと規定した。また、旅客船の入港は認めないと規定した。

今回の決定は即時施行されるものの、度重なる変更によって物流業者のみならず審査を行う当局側でも新しいルールを把握していないなどの混乱が生じている模様だ。そのため、しばらくの間は検問所において、PPAの発表文書を貨物車側が提示して説明をするなどの必要性もありそうだ。

マニラ首都圏のモールや娯楽施設は閉鎖、日本食材の輸出に打撃

フィリピン貿易産業省(DTI)は3月16日、マニラ首都圏のショッピングモールや娯楽施設を同期間、原則閉鎖することを求める通達を発出した。ショッピングモールは生活必需品を販売するスーパーマーケットや食料品店、銀行、医療機関、書店、テイクアウトやデリバリーのみの外食サービスに限定した運営としなければならないとし、特定の場所に人が集まるナイトクラブ、バー、居酒屋、パブの営業は禁止するとした。

ジェトロがヒアリングを行ったところ、既に自治体を通じて日本食レストランなどに対し、テイクアウトやデリバリー以外の営業を停止するよう指示が出ており、日本食レストランを含めて外食産業は大きな影響を受けることが想定される。また、日本からフィリピンに輸出される日本食材の多くが、ショッピングモール内の高級スーパーで取り扱われていることから、日本からフィリピンへの輸出額の減少につながることが懸念される。

なお、フィリピンの新型コロナウイルスの情報は、外務省ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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