年金改革法案を閣議決定、2月17日から国会審議

(フランス)

パリ発

2020年02月04日

職種ごとに42ある年金制度を一本化し、年金支給額の算定方法を現行の拠出期間の四半期数からポイント制度へ変更することを柱とする、フランス年金改革(2019年12月13日記事参照)のための法案2本が、1月24日の閣議で了承外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。

政府は、同法案が「全国民に共通の(年金の)枠組みを提供」し、「世代間をより公平にし、弱者を一層保護し、信頼を回復し、労働に価値を与える、永続的かつ堅固な(年金)制度を構築する」ものとしている。

新たな年金制度は、1975年以降に生まれた世代を対象に2025年から導入する。ただし、2004年以降に生まれた世代は2022年からの適用とする。保険率の一本化に向け約15年間の移行期間を設ける一方、法定退職年齢は現行の62才に据え置く。

具体的には、低額年金所得者への「連帯的」「再分配的」措置として、「満期の年金受給額を法定最低賃金(SMIC)の85%」「第1子から子供1人当たり5%のポイント加算」「優遇措置のある特別制度を廃止、労働の過酷さを反映した早期退職制度の適用」などが盛り込まれている。

2019年12月5日から始まった、年金改革反対を理由としたパリ交通公団(RATP)やフランス国鉄(SNCF)のストはようやく収束し、ほぼ正常運行に戻った。

最大労組で改革派のフランス民主労働総同盟(CFDT)は、1月29日に記者会見を開き、法案の「最低年金および失業期間の考慮」「労働の過酷さおよび労働市場に参入できない若年労働者を考慮したより公正な制度」「(パートタイムで働くことによる)段階的年金生活への移行を可能にする制度」について、さらなる改善を求めた。

国民議会(下院)での法案審議は、2月17日から開始の予定だ。労組の強い反対を受けて、政府が法案の原案から削除した「均衡年齢」措置(2020年1月22日記事参照)の代替案を策定するための「年金の均衡と財政に関する協議会」は、1月30日に発足した。

年金改革に向けて新たな段階を迎えるが、法案では一元化する年金制度の例外的な措置を別途、オルドナンス(注)で規定するなど不明な点も多い。1月24日の改革反対のデモは、内務省の発表によると24万9,000人〔フランス労働総同盟(CGT)の発表によると130万人〕が参加したと多数のメディアで報じられた。今後も改革反対の抗議運動は続きそうだ。

(注)憲法第38条に定められた政府の委任立法権限に基づく法規。政府はオルドナンスの概要を定めた授権法案を国会に提出し、承認された場合、オルドナンスの形式により法律を制定することができる。

(奥山直子)

(フランス)

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