地方行政の体制改革、長官ポストを新設

(モザンビーク)

マプト発

2020年02月21日

モザンビークのフィリペ・ニュシ大統領は1月23日、国内10州と首都マプト市に長官(Secretaries of State)ポストを新設し、11人の長官を任命した。翌24日には2019年10月の総選挙(大統領、国会議員、州議会議員選挙)により選出された10人の知事が就任した。同選挙で与党モザンビーク解放戦線(FRELIMO)が圧勝した(2019年12月9日記事参照)結果、長官・知事の全ポストがFRELIMO党員で占められた。従来の知事1人による行政運営体制から、知事と長官による2頭体制となる。

地方行政の体制改革の背景には、2019年8月の与野党の和平合意(2019年8月13日記事参照)に先立つ与野党間の交渉が大きく関わっている。一部の州で過半数の支持を獲得してきた野党モザンビーク民族抵抗運動(RENAMO)は知事ポストについて、従来の大統領による任命制から、州議会選挙による州知事選出を要望してきた。FRELIMOはその要望に応じる代わりに、大統領の任命による長官ポストを設置することで、中央から地方政府への影響力の維持を狙ったものとみられる。

ニュシ大統領は長官ポスト新設の理由について、地方分権を進め、民主主義体制を強化するためと説明している。しかし、2月4日に政府が承認した地方行政に関する法令案では、長官を首長とする州評議会が経済活動やインフラ、司法、環境、社会問題など主要な州行政サービスを管轄すると新たに規定された。そのため、中央政府によって任命された長官が知事よりも大きな管轄権限を持つとみられる。国内メディアも、選挙によって選出された知事よりも長官の権限が実質的に優位なのは民意の軽視につながり、長官と知事がともにFRELIMO出身者で固めたことにより、与党内の権力争いも激しくなる可能性があるとの見方を示している(「OPais」1月30日)。

なお、農業や製造業の事業を開始する際に必要な土地使用権(DUAT)は現在、農業農村開発省管轄のままだ。今回の長官ポストの設置に関連する一連の動向も引き続き注視する必要がある。

(松永篤)

(モザンビーク)

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