2019年の原油生産量は前年比7.2%減、過去40年間で最低の水準

(メキシコ)

メキシコ発

2020年01月27日

メキシコの国家炭化水素委員会(CNH)は1月21日、2019年の原油生産量が前年比7.2%減の1日当たり167万9,000バレルだったと発表した(図参照)。これは過去40年間で最低の水準となる。政府の2018年12月時点の見通し(2019年予算案策定時)は日量184万7,000バレル、2019年3月に下方修正した際の見通しは178万3,000バレルだったが、最終的には後者を5.8%も下回る結果となった。

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は、2018年12月の就任当初からPEMEXによる原油生産の回復を重視する考えを示し(2018年12月25日記事参照)、浅海や陸上など開発コストの低い20の鉱区に探鉱開発投資を集中させるとしていたが、同20鉱区のうち、現時点までにCNHに投資計画が承認されたのは17鉱区で、そのうちの4鉱区しか原油生産が行われていない(「レフォルマ」紙1月22日)。CNHが発表する月別の数字でみても、PEMEXの鉱区による生産は、2019年12月時点でも日量160万9,000バレルに過ぎず、7月の159万バレルからは増加しているが、前年同月と比較すると1.7%減と低迷している。

図 メキシコの原油生産量推移

原油生産の下げ止まりに貢献しているのは民間鉱区

2019年12月の国全体の原油生産量は、前月比0.5%増、前年同月比0.3%増の171万2,000バレルとなり、2カ月連続で前月比、前年同月比ともに増加となっている。原油生産の下げ止まりに貢献しているのは、前政権下で実施されたエネルギー改革に基づく民間企業への鉱区開放ラウンドで民間企業が落札した鉱区、あるいはPEMEXに割り当てられた鉱区で民間企業との共同開発(ファームアウト)が行われている鉱区における生産だ。これらの民間鉱区からの原油生産量はほぼ右肩上がりで増加しており、12月時点で日量10万3,000バレルに達している。

AMLO大統領は、エネルギー改革による民間企業への鉱区開放は成果がみられないと主張し続けており、前政権下で計画されていた新たな鉱区開放ラウンド(ラウンド3フェーズ2および3)やPEMEX鉱区の共同開発(ファームアウト)の入札は中止されてしまっている。大統領は、政権発足後3年間は民間企業への鉱区開放ラウンドを実施しない考えを示しているが(2018年12月6日記事参照)、PEMEXによる原油生産が低迷し、民間鉱区による原油生産が確実に増加している中で、なるべく早い段階での鉱区開放入札の再開を望む声が強くなっている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

ビジネス短信 3bd5e6cca4b63e36