新政権が国家炭化水素生産計画を発表

(メキシコ)

メキシコ発

2018年12月25日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は12月15日、国家炭化水素生産計画を発表した。ベラクルス州、タバスコ州、カンペチェ州の陸上油田およびメキシコ湾浅海域の採掘を行うもので、任期中の6年間で原油生産を1日当たり240万バレルまで引き上げることを目標としている。

同大統領は「これまでの政権の石油政策の失敗は振り返らない。最も大事なのはメキシコ石油公社(PEMEX)を救うことだ。これまで石油分野で行われてきた投資は国のためになっていなかった」と語り、PEMEXへの投資を増加させることを強調した(大統領府プレスリリース12月15日付)。

メキシコの原油生産量は2004年をピークに減少しており、2018年の生産量は2004年の半分以下の日量154万3,000バレルとなる見込みだ(図参照)。それに伴って、製油所への仕向け量と輸出量も減少している。今回の発表に先立ち、新たな製油所の建設も発表されており、前政権で実施されたエネルギー改革からの路線変更を強く印象付けている(2018年12月13日記事参照)。

図 メキシコの原油生産・製油所仕向け・輸出量

今回の計画で発表された原油生産の目標に対し、専門家は懐疑的な目を向けている。シンクタンクであるウィルソン・センター・メキシコ研究所のダンカン・ウッド氏は「できるだけ多くの原油が生産できることが望ましいが、日量240万バレルは難しく、時間がかかるだろう。2030年くらいには達成できるかもしれない」と語った。また、メキシコのエネルギー関連のコンサルティング企業GMECのゴンサロ・モンロイ社長は「目標はまだ発見されていない油田も含めたもので、目標に達するかどうかは見通せない。もし、過去に失敗しているチコンテペック盆地の再開発に立ち戻るようなことがあれば、得られる成果は最小限だろう」と指摘した(「エル・フィナンシエロ」紙12月17日)。

(岩田理)

(メキシコ)

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