同時爆破テロ後、日系含む外国企業の進出・投資に再開の動き

(スリランカ)

コロンボ発

2019年12月17日

スリランカへの外国企業の進出・投資は、2019年4月の同時爆破テロを受け、一時期様子見の状況にあったが、治安の回復とともに再開し始めた。ジェトロがスリランカ投資委員会(BOI)に同時多発テロ以降の外国投資状況を確認したところ、現在までに複数の外資プロジェクトの契約が締結されていることが分かった。契約が締結されたプロジェクトの一覧(8件)をみると、うち3件がホテル開発で、スリランカの観光需要を見込んだものとみられる(表参照)。

表 2019年4月21日の同時爆破テロ以降に契約が締結された外資プロジェクト例

スリランカでは、テロを受けて海外からの旅行者数が一時、激減していたが、治安の回復や政府による迅速な観光復興施策の導入を受け、急回復している(2019年9月12日付地域・分析レポート参照)。契約が締結されたプロジェクトのうちの1つであるワカナ・ジェイピーエヌによる案件は、2019年7月のBOIウェブサイトの発表によると、南西部のアフンガラに21室のブティックホテルを建設するもので、投資額は840万米ドル、デザインは日本の建築家の隈研吾氏が手掛けるという。

また、近年の同分野での日系企業の大型案件としては、2018年の小田急電鉄よる南部マータラの高級リゾートホテル開発に関連した投資がある。同社は、2019年4月のテロ事件を受け、開発許可取得の判断を保留していたが、観光客の回復を受け、許可取得に向け動いていく予定であることを、スリランカ投資委員会とジェトロが9月に東京で開催したセミナーで明らかにしている。

そのほか、テロ後のスリランカでの日系企業の動きとしては、10月に物流の近鉄エクスプレスが業務を開始、同じく10月にJCBが、スリランカ中央銀行が設立した銀行間ネットワーク運営主体との提携により、JCBカードの発行を開始するなど、日系企業にも進出・サービス展開の動きがみられる。

4月の同時爆破テロで、各国がスリランカの危険レベルを引き上げていたが〔日本は危険レベル2(不要不急の渡航はやめてください)〕、その後治安状況の安定を受けて、各国は危険レベルの引き下げに動き、日本の外務省も6月25日に危険レベルを「レベル2」から、「レベル1(十分注意してください)」に変更した。スリランカ政府も8月23日、4カ月ぶりに非常事態宣言を解除した(2019年9月26日記事参照)。テロ以降、日本からの出張を控える企業が多かったが、外務省の危険レベルの引き下げと、スリランカ政府の非常事態宣言の解除を受け、契約締結・市場調査など、さまざまな目的で日本から出張する事例がみられる。

(三木貴博、糸長真知)

(スリランカ)

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