経済特区庁、15年間の税制優遇見直し猶予を要望

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月12日

フィリピン経済特区庁(PEZA)のチャリト・プラザ長官は、上院で審議されている財務省主導の税制改革第2弾法案「CITIRA法案」(2019年10月2日付地域・分析レポート参照)による日系を含む多くの外資系企業が入居する経済特区の税制優遇制度(注1)の抜本的見直しの効力が発効するまでに15年間の猶予期間を求めるとする声明を発表した。12月1日付の「マニラスタンダード」などの地元各紙が報じた。

PEZAはCITIRA法案に継続して反対してきたが、プラザ長官が10月9日に貿易産業省(DTI)のラモン・ロペス長官と会談した際、PEZAとDTIが和解し、一定の条件下でCITIRA法案をともに支持することで合意に達したと表明した(2019年10月11日記事参照)。その際、CITIRA法案に基づいて新制度に移行するまでの猶予期間について、法案が規定する2~5年ではなく、10~15年に延長することをPEZAとしての和解条件の1つとしていた。PEZAは今回あらためて15年の猶予期間が必要と主張したわけだ。

今回のPEZA声明は、フィリピン経済特区協会や、半導体・電子工業会(SEIPI)、ITビジネス・プロセス協会(IBPAP)、衣料品輸出業者連盟(CONWEP)、外国商工会議所連合(JFC、注2)といったPEZA入居企業が多く所属する業界団体などと1カ月以上にわたる協議に基づくとされる。

プラザ長官は、PEZAはCITIRA法案支持を決めたものの、現在の内容では多くの海外企業がフィリピンから撤退することが想定され、ひいては多くのフィリピン国民の失業につながることを懸念しているとした。

一方で、PEZAを所管するDTIは新制度への猶予期間は5~10年とするべきとの立場を取っており、PEZAの取締役会議長のロペスDTI長官は、15年必要とするプラザ長官の意見はPEZAの総意ではないと述べている。

(注1)PEZAに入居する製造業の場合、(1)法人所得税の3~6年間の免除(ITH)、(2)ITH終了後は売上総利益の5%を法人所得税とする特別所得税率の適用、(3)関税、埠頭(ふとう)税、輸出税の免除、(4)税関手続きの簡略化などが適用されている。

(注2)JFCは、米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、欧州、日本、韓国の現地商工会議所や多国籍企業駐在事務所協会(PAMURI)で構成されている。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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