3回目の離脱延期で先行き不透明なブレグジットの見通し、ジェトロセミナー

(英国、EU)

欧州ロシアCIS課

2019年11月06日

ジェトロは10月30日、東京で「英国のEU離脱(ブレグジット)セミナー」を開催し、英国とEU、ドイツから見たブレグジットの動向を説明した(2019年11月6日記事参照)。

ジェトロの北川浩伸理事は冒頭のあいさつで、ブレグジットによる将来のビジネス環境はいまだ不透明であることに言及し、ジェトロではブレグジットの特集ページやセミナー・説明会などを通じて情報発信をするとともに、経済産業省と連携したブレグジット対応サービスデスクを設置し、積極的に相談対応を行っていることを紹介、ジェトロのサービス活用を呼び掛けた。

セミナーの前半では、ジェトロ・ロンドン事務所の中原廣道産業調査員が登壇し、英国から見たブレグジットの最新動向を解説した。10月17日に英国とEUが合意した新離脱協定案と新政治宣言案に触れ、新離脱協定案では、アイルランド・北アイルランド間の国境管理に関する「バックストップ」が削除され、新たな代替案が盛り込まれたこと、政治宣言案では、EUとの通商関係について、関税同盟を発展させた関税取り決めから、自由貿易協定(FTA)をベースとするものへと基盤が変更されたことなど、主な相違(2019年10月18日記事参照)を説明した。

直近の動向として、EUが10月28日にブレグジットの期限を3カ月延期することを大筋で認め(10月29日に正式承認)、10月29日には、ボリス・ジョンソン首相が提出した12月12日を英国議会総選挙の投票日とする法案が可決されたことを紹介した。

今後の動向は総選挙まで不透明であり、2020年1月31日の離脱期限を迎えて再度、合意なき離脱(ノー・ディール)となる可能性もあることを指摘。自社に関係するリスクとノー・ディール時のコストを引き続き検討し、可能な対策を行うのが望ましいとした。円滑な離脱の場合でも、移行期間は2020年末までで、認められている1年または2年延長をしてもなお、英国とEUの将来関係に関する協定の交渉期間は短く、ノー・ディールとなる可能性は継続する点にも留意が必要と説明した。

また、総選挙により方向性が変更される可能性もあるものの、長期的には、現状のジョンソン政権は自由貿易拡大を志向し、積極的に各国と通商交渉をしていく方針を示している。一方、離脱を取りやめない限り、EUとの通商関係はどのようなモデルでも現在より遠くなり、新たに生じる通関手続きや異なる規制は全てコスト要因になる点には注意が必要とした。

通商関係の問題とは別に、英国の持つ研究開発や人材の競争力は引き続き大きな魅力で、これに目を付けた外国企業の進出は堅調である点にも中原産業調査員は言及。不確実性と魅力が存在する英国を事業戦略の中でどのように位置付けるか、経営判断が問われていると指摘した。

写真 解説するジェトロ・ロンドン事務所の中原廣道産業調査員(ジェトロ撮影)

解説するジェトロ・ロンドン事務所の中原廣道産業調査員(ジェトロ撮影)

(宮口祐貴)

(英国、EU)

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