外国とのインターネット通信を制限する連邦法が発効

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年11月06日

ロシアで、有事の際などに外国とのインターネット通信を遮断・制限する連邦法(通称「主権インターネット法」)が11月1日に発効した。

この連邦法は5月1日にプーチン大統領が署名していた(2019年5月8日記事参照)。発効に伴い、通信事業者はインターネット通信トラフィック(送受信情報)への脅威に対抗したり、禁止されたウェブサイトへのアクセスを制限したりする技術手段をネットワーク上に設置することが義務付けられた。加えて、ロシアのインターネットが脅威にさらされた際、通信網の集中管理が連邦通信・IT・マスコミ監督局(ロスコムナドゾル)によって行われること、ロシアのインターネットの安全保障に関する訓練が1年に1回以上実施されることなどが規定されている。

他方で、法令整備や脅威の定義(リスト)、脅威への対抗に必要な技術機器の要件などの策定作業は遅れており、連邦法で規定されている内容の実現には時間を要する見込みだ。法令整備について、デジタル発展・通信・マスコミ省のエフゲニー・ノビコフ報道官は「主権インターネット法の関連法令の策定作業はほとんど終えており、10の法令のうち7つの法令が既に採択され、うち3つは署名されている」と述べているが、ある民間通信事業者は、何を「脅威」とするのかというリストはいまだ政府によって承認されていないと指摘している(主要経済紙「コメルサント」11月1日)。

「コメルサント」(11月1日)によると、技術機器の試験は、ロスコムナドゾル傘下の主無線周波センターによって7月に開始されているが、技術要件が現時点で規定されていないようだ。この遅れの理由として、関連法令が行政当局による管理監督活動の抜本的見直し作業(2019年6月6日記事参照)の対象の中に含まれてしまったためとも言われている。このため、連邦政府による設備配置にはさらに1年を要するとみられている。

主権インターネット法を起草したアンドレイ・クリシャス上院議員によると、本法の規定内容の実現に必要とされる機器の設置・メンテナンスに伴うコストは国家予算によって賄われ、その金額は200億ルーブル(約340億円、1ルーブル=約1.7円)に上るという。

(齋藤寛)

(ロシア)

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