英自動車業界、4社に3社がノー・ディール対策を実施

(英国、EU)

ロンドン発

2019年10月17日

英国自動車製造販売者協会(SMMT)は10月15日、英国のEU離脱(ブレグジット)に関する調査の結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。調査結果からは、合意なき離脱(ノー・ディール)の可能性がいつまでも消えない状況が、業界に大きな影を落としていることがあらためて浮き彫りになった。

調査は今回、SMMTの会員企業を対象にオンラインで行われ、158社が回答した。会員は、英国に拠点を持つ自動車メーカーや自動車部品メーカーなどから成る。

ノー・ディールとなった場合の影響について、「自社の将来見通しに悪影響」と回答した企業は回答企業全体の80.3%、「収益性に悪影響」とした企業は79.6%に上った。また、「海外での競争力に悪影響」と回答した企業は62.2%で、「英国事業への投資が困難」とした企業もほぼ同数だった。さらに、「事業への悪影響が英国の離脱前から既に顕在化」とした企業は77.2%に達し、長引く不透明感が経営を圧迫している現状が示されている。

こうした中、多くの企業はノー・ディールの可能性に備えた準備を進めている。回答企業の73.2%が、「離脱後の混乱への対策に着手している」と回答。このうち、約半分は在庫積み増しや倉庫拡張を、3分の1は海上輸送を含む物流ルートの変更を実施している。新たな通関制度への対応を進めている企業は26.8%だった。

図 英国自動車産業界のブレグジットに対するアンケート結果

調査では、事業を縮小する企業が増えていることも示された。人員削減を既に実施した企業は3社に1社となり、8社に1社だった2018年11月の前回調査から大きく増加。割合は少ないものの、英国事業を売却・譲渡した企業は11.8%、事業を国外に移転した企業も13.4%に達している。ドイツなど国外も含むさまざまな事業環境の変化(2019年7月3日記事7月16日記事参照)もあるため、こうした事業縮小の動きが全てブレグジットに起因するわけではない。しかしブレグジット、とりわけノー・ディールの懸念が業界を苦しめていることは間違いない。SMMTの別の調査によると、英国の複数の大手自動車メーカーがノー・ディール対策のために費やした金額は5億ポンド以上。マイク・ホーズ会長は声明で、「ノー・ディールの可能性が消えない限り、投資は失われ、英国への信頼回復が困難になる」と述べ、円滑な離脱の必要性を訴えている。

産業界の懸念はノー・ディールにとどまらず、ボリス・ジョンソン首相が目指すEUとの将来関係にも及ぶ。BBC(10月11日)によると、SMMTなど自動車、航空、化学、食品・飲料・製薬の製造業4団体は連名で、ブレグジット担当閣僚らに書簡を提出。「(EUとの)規制の統一(alignment)は、英国とEUの将来関係における最も重要な要素で、ブレグジット後も継続されるべき」と主張し、EUとできるだけ距離を置きたい政権に反発しているとする。

(岩井晴美、宮崎拓)

(英国、EU)

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