オリョール州に工業生産用途の特区を設置

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年10月16日

ロシア連邦政府は10月3日、モスクワの南約320キロに位置するオリョール州ムツェンスク市郊外での工業生産型特別経済区(SEZ「オリョール」)の設置に関する連邦政府決定に署名したと発表した(2019年9月24日連邦政府決定代1241号)。

工業生産型特別経済区とは、工業製品の生産活動を想定した特別経済区(特区)。主要経済紙「コメルサント」(2月13日)によると、今回設置される特区はオリョール市の北東30キロ、ムツェンスク市の南東2キロに位置する工業団地「ゼリョンナヤ・ロシチャ」の敷地(面積約140ヘクタール)内に位置する。

連邦政府によると、SEZ「オリョール」の設置は、投資誘致と新規雇用創出を通じてオリョール州の社会経済発展に貢献するものとしている。特区では、さまざまな種類の穀物加工場や牛乳工場、皮革製品製造工場、最新技術を用いたポリエチレン袋生産工場、循環型の水産物養殖・加工場の建設・設置が計画されている。特区への潜在的入居企業による2028年までの投資額は92億ルーブル(約156億円、1ルーブル=約1.7円)超、新規雇用は約2,000人となると見込んでいる。

連邦政府決定には、オリョール州政府が2023年までに10億5,030万ルーブル以上を拠出し、特区に必要な工業・輸送・社会分野のインフラ整備をしなければならないと明記されているが、既に工業・輸送インフラなどは整備されているようだ。今回の特区認定に伴い、オリョール州政府は追加でインフラ整備を行うことになる(「コメルサント」紙2月13日)。

工業生産型特区はリペツク州やボロネジ州(2019年1月17日記事参照)などの近隣地域にも設置されており、隣接するクルスク州も特区設置を申請しているため、この地域の企業誘致競争が過熱しそうだ。この点について、リペツク州の工業生産型特別経済区「リペツク」のイワン・コシェリョフ社長は「特区入居の意向を発表する企業は数百社に上っても、実際に立地するのはわずか数社にすぎない。投資家による要求は非常に高くなっている」とし、特区を設置しても企業誘致は容易ではないと語った(「コメルサント」紙2月13日)。

オリョール州は中央連邦管区に属する連邦構成体で人口は74万人。主要産業は機械製造、食品加工、建材生産など。ムツェンスク市には鋳鉄、機械製造産業が立地している。単一産業都市(モノゴロド)で、4月には優先的社会経済発展区域(TOR)が設置されている(2019年4月26日記事参照)。

(齋藤寛)

(ロシア)

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