ノワテク、カムチャツカ地方とムルマンスク州のLNG積み替えターミナル建設で商船三井、JBICと協力合意

(ロシア、日本)

欧州ロシアCIS課

2019年10月02日

ロシア北西部・北極圏のヤマロ・ネネツ自治管区で天然ガス採掘を行う独立系天然ガス開発会社ノワテクは9月26日、商船三井、国際協力銀行(JBIC)と、カムチャツカ地方とムルマンスク州における海洋液化天然ガス(LNG)積み替えターミナル複合体の建設プロジェクト実施を目的とする、協力合意書に署名したと発表した。今回の合意には、同プロジェクトへの出資、ファイナンスの提供の可能性が含まれるとしているが、詳細は明らかにしていない。

カムチャツカ地方のプロジェクトは、同半島東部沿岸ベチェビンスカヤ湾に建設されるもの。2つの浮体式LNG貯蔵施設、船舶用水路、バース(係留施設)の建設などが含まれる。「ヤマルLNG」プロジェクト(YLP)および「アルクティクLNG2」プロジェクト(AL2P)で製造されるLNGを、北極海経由でカムチャツカ地方まで輸送し、砕氷船タンカーから(アジア太平洋地域の需要家向けの)通常タンカーへ積み替える(2018年8月15日記事参照2019年3月27日記事参照)。ムルマンスク州のプロジェクトには、同港沖でのLNG保管用の海上タンク2基、岸壁施設、関連港湾インフラ建設が含まれている(2019年5月15日記事参照)。

ノワテクのレオニード・ミヘルソン会長は「当社は、日本企業とともにYLP、AL2Pなどの大型LNGプロジェクトを実施しているが、(今回の合意は)相互に利益のある協力をさらに拡大する、大きな潜在性を秘めているもの」と指摘。さらに、「カムチャツカ地方およびムルマンスク州での積み替え複合体建設は、ヤマル半島と、(同半島に隣接する)ギダン半島から、日本を含むアジア太平洋地域のLNGの主要市場への物流最適化と、LNG輸送効率の最大化につながるもの」とし、2019年末までにこれらのプロジェクトの最終合意を取り付けたい、と語った。

商船三井はYLPへの参画を着々と深めている。同社は9月25日、2017年6月末に締結した、YLP向けLNG船4隻の長期定期貸船契約に基づき、中国・上海の滬東中華造船(集団)で製造したLNG船の命名式を行ったと発表した。今回建造しているLNG船は10月末にヤードで竣工(しゅんこう)した後、YLPで産出されたLNGを、欧州の中継港もしくは、シップ・トゥー・シップ(注)積み替え地点からのLNG輸送に従事する予定としている。なお、商船三井は、2018~2019年にYLP向けに既に3隻の砕氷LNG船を投入しており、北極海航路を経由するLNG輸送に携わっている。

(注)2つの船が陸上の桟橋を介さず、横並びの状態で互いを直接係留して積み替えを行う方式。ノルウェーのホニングスボークで行われている。

(齋藤寛)

(ロシア、日本)

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