職員の試用期間を半年から2年に延長する法案提出、労働雇用省は反発

(フィリピン)

マニラ発

2019年10月30日

フィリピンで現在最長6カ月認められている職員の試用期間を2年間に延長する法案が提出された、と10月16日付の地元各紙が報じた。

現在、労働法281条に基づき、企業で採用された職員は初めに最長6カ月の試用期間に置かれ、期間終了時に雇用者が当該職員を正社員として本採用するか判断するとされている。また、本採用された正社員は、契約違反や事業の縮小などの理由を除き、一方的な解雇は不可能とされ、雇用者都合による解雇の場合、解雇手当を支払うと定められている。

法案を提出したホセ・ボニト・シンソン下院議員は、現行の労働法が定める最長6カ月の試用期間は雇用者にとって本採用を判断する時間として短く、特に特別なスキルや才能を必要とするポジションについてはより長い時間が必要だとした上で、「試用期間にある職員はより長い試用期間を得ることで新しいスキルを習得し、雇用者が求める水準のパフォーマンスを満たすことが可能となる」と法案の正当性を主張した。

一方で、労働雇用省のシルベストル・ベリョ長官は、2年間の試用期間は長過ぎ、半年で本採用を判断できない雇用者は2年間でも判断できないとして、法案を支持しないとの姿勢を示した。また、試用期間の延長はかねて現政権が問題視している雇用の有期化につながると地元メディアに対して主張した。

ドゥテルテ大統領は2016年6月の就任以降、労働者を保護するための労務関連法規を制定し、雇用主側に順守の徹底を求めている。最初に行われたのは、半年の試用期間に満たない期限付きの雇用契約の下、解雇と再雇用を繰り返す短期雇用形態「ENDO(end of contractの略)」の取り締まり強化だ。次は「労働力のみの請負契約」で、労働者を派遣請負業者から受け入れた際、請負業者ではなく受け入れ企業が直接指揮監督していると労働雇用省がみなした場合、受け入れ企業が派遣労働者の直接の雇用者とされ、自社の社員として雇用する義務を負うとした。しかし、これについては7月26日に自ら拒否権を発動(2019年7月31日記事参照)し、法案を国会に差し戻し、2019年末まで再提出が遅れる可能性が高いと報道されている(2019年9月27日記事参照)。

試用期間を2年間に延長する法案は現在、下院労働雇用委員会で審議されており、法案が成立した場合は120日以内に労働雇用省が施行細則(IRR)を発行する。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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