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労働のみの請負契約を厳格に禁止する法案に大統領が拒否権を発動

(フィリピン)

マニラ発

2019年07月31日

フィリピンのドゥテルテ大統領は7月26日、労働のみの請負契約(注)や、短期の雇用契約で解雇と再雇用を繰り返すことを厳格に禁止する法案(上院第1826号)について拒否権を発動し、法案が国会に差し戻された。同法案は2019年5月22日に上院を通過した後に、下院が上院の法案の内容を承認し、ドゥテルテ大統領による署名を待つだけの状態となっていた(2019年7月9日記事参照)。

ドゥテルテ大統領は拒否権発動の理由として、法案が定義する「労働のみの請負契約」の範囲が広範なものとなっており、仮に法案が成立した場合は労使の健全なバランスが破壊され、雇用者側を窮地に追い込み、長期的にみると労働者にも不利益をもたらすとした。また、現時点でフィリピンは既に、雇用の柔軟性や労働コストの面で近隣諸国に比べて比較優位性が失われているとし、これ以上の投資の落ち込みを避けることを理由に挙げた。

同法案をめぐっては、労働雇用省(DOLE)が同法案を支持する一方で、国家経済開発庁(NEDA)のアーネスト・ペルニア長官が「労使双方の利益のためにも法案の内容を修正すべきだ」とコメントするなど、政府内でも意見が割れていた。業界団体や外国商工会議所といった産業界からも、拒否権発動を求めた嘆願書がドゥテルテ大統領に対して提出され、「同法案が可決された場合、雇用者側にオートメーションやAI(人工知能)による単純労働者の代替を促すことになる」と警告していた。

同法案は国会に差し戻され、再審議される見込みだが、フランクリン・ドリロン上院議員は地元メディアに対して、「政府内でよく調整を図った上で法案を再審議しなければ、また無駄な結末になるだろう」とコメントした。同じくラルフ・レクト上院議員は、ドゥテルテ大統領が示した拒否権発動の理由が不明確だとした上で、「政府は労働のみの請負契約を禁止したいのであれば、政府自身で法案を作成し、国会に提出するべきだ」とした。

2018年の施政方針演説(SONA)において、ドゥテルテ大統領は「労働者の解雇されない権利を守ることは政権の優先課題で、解雇と再雇用を繰り返す期限付き雇用方式の撤廃と労働者の正社員化を進めていく」と述べていたが、2019年7月22日のSONAでは本件に関する言及はなかった。

(注)労働者を派遣請負業者から受け入れた際、請負業者ではなく受け入れ企業が直接指揮監督しているとDOLEが見なした場合、受け入れ企業が派遣労働者の直接の雇用者と見なされ、自社の社員として雇用する義務を負う。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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