野党の大統領候補、債務返済について言及

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年10月03日

アルゼンチンで10月27日に実施される大統領選挙まで1カ月を切り、次第に個別のテーマが議論されてきている。選挙戦をリードする野党・ペロン党急進派「すべての戦線」のアルベルト・フェルナンデス候補は9月26日、アルゼンチン第2の都市コルドバで開催されたイベントで講演し、債務返済について、当選後、早々に着手するとともに、ウルグアイが2003年に行った方法による解決策に倣うことを示唆した。

現在、アルゼンチン政府は、IMFから2018年6月に総額563億ドルに及ぶスタンドバイ融資を受けるとともに、総額約1,100億ドルの債務を抱えているとされる、昨今の経済情勢を鑑み、市場では同国の返済能力に懐疑的な見方が出ている。8月29日には格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が、アルゼンチンの短期国債を一時的に「SD(選択的デフォルト)」に格下げするなどの動きがあり(2019年9月3日記事参照)、アルゼンチン政府も資本取引規制の時限措置を講じている(2019年9月3日記事参照)。

フェルナンデス候補は8月末、海外メディアに対して、アルゼンチンを「事実上のデフォルト(債務不履行)」とやゆする発言を行ったが、現在では「債務を前にして一度も支払わないと言ったことはない」と語るなど、債務問題に前向きに取り組む姿勢を見せている。また、同候補の経済顧問などは、欧米の機関投資家と債務返済方法について非公式な協議を始めていることが報じられており(「クラリン」紙9月29日)、フェルナンデス候補は、隣国ウルグアイが行ったように、元本を削減せずに債務問題を解決することが可能との見方も示している。

ウルグアイでは、2003年に政府債務残高のGDP比が100%近くまで膨れ上がりデフォルト危機に見舞われたが、米国政府やIMFをはじめとした債権者と交渉を重ね、最終的に債務の再構築で債権者と合意し、債務元本削減の回避に成功した。

ただ、当時のウルグアイと現在のアルゼンチンでは置かれた環境が異なることにも留意すべきだ。当時のホルヘ・バジェ政権には、デフォルトを起こさないという強い覚悟があった。また、バジェ大統領とウィリアム・マクドナー・ニューヨーク連銀総裁(いずれも当時)は40年近くの交友関係があり両者間の信頼関係も強固で、最終的に米国政府によるつなぎ融資によってデフォルトを免れることになった。一方、アルベルト・フェルナンデス候補率いるペロン党急進派の先進国における評価は未知数だ。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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