ロシアが気候変動に関するパリ協定を批准

(ロシア、世界)

欧州ロシアCIS課

2019年09月25日

ロシア連邦政府は9月23日、ニューヨークで開催された国連気候変動サミットに合わせ、パリ協定を批准したと発表した(2019年9月21日付連邦政府決定第1228号)。協定参加197カ国・地域のうち、ロシアは187番目の批准国となった。ロシアは2016年4月22日にパリ協定に署名したが(2016年4月14日付連邦政府指示第670-r号)、批准手続きが遅れていた(2019年7月17日記事参照)。

パリ協定は、第21回気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で2015年12月12日に採択された、2020年以降の温室効果ガス排出削減など気候変動抑制に関する多国間協定。世界の温室効果ガス排出量の55%以上を占める気候変動枠組み条約締約国の55カ国が批准を終えた2016年11月4日に発効した。産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑え、できれば1.5度未満にすることを目指すもの。協定参加国のうち、これまでに批准・受諾・承認・加入手続きを実施していない国は、アンゴラ、エリトリア、イラン、イラク、キルギス、レバノン、リビア、南スーダン、トルコ、イエメン。米国は2017年6月に離脱を表明している。

メドベージェフ首相は9月23日の副首相10人との定例会合で、「気候変動は農業をはじめとするロシアの主要産業発展のリスクを高める。さらに、永久凍土帯に住む人々の脅威となり、自然災害の発生件数も増加するため、ロシアにとってパリ協定への参加は重要だ」と指摘。環境政策を担当するアレクセイ・ゴルデエフ副首相はこの会合で、「パリ協定への批准は世界的な気候変動議論への参加を意味し、温室効果ガス排出量世界第4位のロシアにとっては重要な意味を持つ」と語った。フランスのマクロン大統領はロシアのパリ協定批准について、「素晴らしい。気候変動対策が進展していることの証しだ」とコメントした。

ロシア高等経済学院世界経済学科長のイーゴリ・マカロフ氏は「ロシアが気候変動との闘いと低炭素化運動に不可欠な国際社会のコンセンサスを共有したという点で非常に重要」と評する一方、パリ協定に基づく排出ガス規制措置、さらには、炭化水素燃料の生産・輸出に依存するロシアが低炭素化の未来に適応する戦略を描けない場合、見せかけで終わってしまうと懸念を表した(「コメルサント」紙9月24日)。

パリ協定批准に伴い、ロシアでは年間15万トン以上の二酸化炭素(CO2)を排出する事業者に、排出のモニタリングと報告書提出を義務付ける排出ガス規制法案を策定中と報じられている(「コメルサント」紙9月9日)。このほか、9~12月の間に時限的にオゾン層破壊物質の輸入割り当て制度を導入したり(2019年9月3日記事参照)、国内12都市で大気汚染物質の排出量割り当て試験(2019年7月31日記事参照)を実施したりするなどの措置も講じられている。

(齋藤寛)

(ロシア、世界)

ビジネス短信 987c3dfa5cc11f09