国内12都市での大気汚染物質の排出割当試験実施に関する法案を下院が採択

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年07月31日

ロシア連邦下院は7月17日、ロシア国内12都市での大気汚染物質の排出量割当試験の実施に関する連邦法案が第3読会(最終読会)を通過したと発表した。今後、連邦上院での審議で承認され、大統領が署名すれば、2019年11月1日に発効する。排出量割当とは、環境に悪影響を及ぼす施設・インフラの固定排出源から排出される(有害物質の)濃度寄与量や、排出削減量を考慮して設定された許容排出量のこと。試験対象都市は、リペツク、チェルポベツ(ボログダ州)、メドノゴルスク(オレンブルク州)、ニジュニ・タギル(スベルドロフスク州)、チェリャビンスク、マグニトゴルスク(チェリャビンスク州)、オムスク、ノボクズネツク(ケメロボ州・クズバス)、クラスノヤルスク、ノリリスク(クラスノヤルスク地方)、ブラーツク(イルクーツク州)、チタ(ザバイカル地方)。試験期間は2020年1月1日~2024年12月31日。対象都市はこの期間内に、汚染物質の大気への排出量の20%以上の削減を確実に実施しなければならないとされている。

法案は、プーチン大統領が2018年5月7日に4期目の就任式と同時に署名した「2024年までのロシア連邦発展戦略の課題と国家目標」(2018年5月7日記事参照)や2019年2月20日に実施された同大統領による年次教書演説(2019年2月21日記事参照)などに基づき策定された。法案では、排出量割当の設定に向け、まずは大気汚染物質排出量の計測や計測手続き、天候の優れない状況下での排出量削減方法の基準の策定などを規定する。その後、試験を通じて、ロシア天然資源利用監督局(ロスプリロドナドゾル)が排出量を算定し、同局の計測データに基づき、人体の健康へのリスクに鑑み、優先的に対処すべき有害物質の特定と、排気量割当施設・インフラ(道路、住居、工業施設など)のリストを作成するとしている。

これらに基づき、主たる大気汚染企業には排出量割当の達成に向けた措置の策定と実施が義務付けられ、実験期間中に当該措置を実施できない場合には、緑化や廃棄物埋立地の再利用などの補償活動に従事することになる。地方政府当局にも、道路、住宅、暖房供給事業施設などからの排出許容量基準の達成に、必要な措置を講じる義務が課される。加えて、大気汚染削減と大気の質の監視に向けた、連邦レベルの情報システムを構築する。下院生態系・環境保全委員会ウラジミル・ブルマトフ委員長は「本法案の策定は、2016年から議論を始めたが、数年を要した」と述べた。

本法案に対し、産業界からは批判の声が上がっている。ロシア産業家起業家連盟(RSPP)は「多くの企業は排出量削減目標達成に向け生産停止や減産などの問題に直面する。これにより大規模な雇用削減・給与引き下げを引き起こす恐れがあり、税収減にもつながる。加えて、本法案によるメカニズムでは、企業が目標達成に向け、汚職に手を染める可能性がある」と指摘している(「コメルサント」紙7月18日)。

(齋藤寛)

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