広西チワン族自治区に自由貿易試験区を設立、ASEANと陸・海で連携を強化

(中国)

広州発

2019年09月06日

中国国務院は8月26日、「6つの自由貿易試験区を新設する総体方案に関する通知」を発表し、新たに6省・自治区に自由貿易試験区を設立するとした(2019年8月28日記事参照)。うち、広西チワン族自治区に設置される「中国(広西)自由貿易試験区」(以下、広西自易区)は、ASEAN各国と陸・海で隣接する優位性を生かすとされ、中国の西南部・中南部・西北地域の海への出口として位置付けられている。また、「一帯一路」構想の21世紀の海上シルクロードとシルクロード経済ベルトの連結にも力を入れる。

物流ルートを強化

広西自貿区は南寧エリア、欽州港エリア、崇左エリアからなる。各エリアは、いずれも広西チワン族自治区の南方に位置し、ASEANとの連携を重視した配置となっている。

エリア別に重点産業が示されていることに加え、中国とシンガポールの合意に基づき構築が進められている重慶市とシンガポールを結ぶ物流ルート「国際陸海貿易新通道」(以下、新通道)での役割が示されている(表参照)。

表 中国(広西)自由貿易試験区の各エリアの概要

新通道について、これまで広州チワン族自治区では欽州港が、重慶市からの鉄道路線とシンガポールなどへの船便をつなぐ中継点として主要な役割を果たしてきた。今後は3エリアともに、新通道発展への貢献が求められる。

そのほか、広西自貿区の主な任務として(1)政府機能の転換の加速、(2)投資分野の改革深化、(3)貿易の構造転換・レベルアップの推進、(4)金融分野での開放・イノベーションの深化、(5)イノベーションに基づく発展の推進、(6)ASEANに向けた新通道の建設、(7)「一帯一路」の有機的連携の重要ゲートの形成、の7分野について、16項目の内容が盛り込まれている(添付資料参照)。

インフラ整備に課題

広西社会科学院東南アジア研究所の雷小華副所長は、広州チワン族自治区とASEANとの連携について、欽州保税港区、南寧総合保税区、憑祥総合保税区、中越越境経済合作区などのプラットフォームに加え、地理的・文化的な近さやビジネスのつながりが有利に働く、と指摘した。政府系シンクタンクである広州チワン族自治区発展研究中心の楊叢主任は、広西自貿区の課題としてインフラ整備の不足を挙げ、港と鉄道の連結、中国西部各省との鉄道・道路・航空物流ルートの拡充、通関能力の増強などが必要、としている(「広西日報」8月30日)。

(河野円洋)

(中国)

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