景況は悪化するも、依然として高い市場潜在性への期待
(ロシア)
モスクワ発
2019年09月25日
ジェトロは9月4~19日、在ロシア日系企業景況感調査を実施した。自社の景況感(最近の状況)DI(注)は、前回調査(2019年4月26日記事参照)に比べ、14ポイント減のプラス13と大きく低下した(図参照)。自社の景況見通し(2カ月後の状況)DIも、8ポイント減のプラス16と低下傾向が続いた。
ジェトロの在ロシア日系企業景況感調査
2019年に入ってからの景気減速(2019年8月28日記事参照)により、前年の同時期に比べて業績が伸び悩む企業が多い。特に1月からの付加価値税(VAT)引き上げ(18%→20%)や実質可処分所得の低迷などによる小売市場の鈍化の影響が大きいとみられる。通貨ルーブル安などにより原材料価格が上昇する一方、市況低迷へのてこ入れおよび在庫処分を目的とした値下げ競争で収益率が悪化したという声が回答企業から上がった。
今後1~2年のロシアでの事業展開見通しについては、「拡大」または「維持」と回答した企業が前回調査に引き続き9割を占めた。原油価格、ルーブル為替レート、米国などとの地政学的リスクを懸念し、引き続き慎重な姿勢をみせる企業は多いが、インフレの収束、低調ながらも続くプラス成長、市場ポテンシャルへの期待は大きい。他方、市場の価格重視傾向が強まっており、日本ブランドの高品質・高付加価値の訴求が難しくなってきているとの指摘もみられた。
今後の事業展開の戦略として、日本製品の認知度向上、ロシア地場企業との取引拡大、CIS圏への展開といった積極的な声が出た。他方、本社の意向は事業拡大よりも利益確保が最優先、本社のロシアに対する優先度が高くないため思い切った事業展開を取りづらいといった意見もあり、本社側はロシア市場に対して慎重な姿勢だ。
今回の調査は、モスクワ・ジャパンクラブ商工部会とサンクトペテルブルク日本商工会の協力の下、ロシアに所在する日系企業約250社を対象に実施し、83社から回答を得た。回答企業のうち、製造業は14社、非製造業(メーカーの販売会社を含む)は69社だった。
(注)景気動向指数:ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略。「良い」と回答した企業の比率から、「悪い」と回答した企業の比率を差し引いた数値。
(戎佑一郎)
(ロシア)
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