第2四半期のGDP成長率は0.9%、低成長が続く

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年08月28日

ロシア連邦国家統計局は8月12日、2019年第2四半期のGDP成長率を0.9%(前年同期比、速報値)と発表した。第2四半期は鉱工業生産、農業、実質賃金の伸びが拡大し、2019年第1四半期の成長率(0.5%)を上回ったが、小売商品売上高、建設、貨物輸送などが減速し、低成長にとどまった(表参照)。

表 ロシアの主要経済指標の推移(前年同期比)

経済発展省は成長の鈍さについて、依然として続く財政拠出の引き締め、高い金利水準、米中貿易紛争をはじめとした保護主義的な動きによる世界的な経済成長の鈍化、それに伴うロシアの輸出減を挙げている(経済発展省発表8月12日)。英国の経済分析機関キャピタルエコノミクスのアナリストは小売り部門の軟調な伸びについて、2019年初に実施された付加価値税の引き上げ(18%→20%)が影響していると指摘する(「コメルサント」紙8月13日)。

今後の予測について経済発展省は、第3四半期以降に景気回復が顕在化するとし、下半期には1.6~1.8%の成長が見込まれ、通年の成長率は1.3%と見通している。回復の要因としては、2018年5月の大統領令(2018年5月8日記事参照)に基づく国家プロジェクトの実施に伴う予算執行の拡大や、ロシア中央銀行が2019年6月と7月に2カ月連続で実施した利下げの波及効果(注)を挙げている。

GDPがわずかながら成長しているものの、国民の多くは経済成長を実感しておらず、今後も悲観的にみていることが、消費に影を落としている。「コメルサント」紙(8月20日)によると、実質賃金は回復傾向にある一方で、実質可処分所得の伸びがマイナスとなっており、これが消費者の購買意欲を減退させている。実際に、耐久消費財の代表格である乗用車の販売台数は2019年上半期に前年同期比で2.4%減と落ち込んだ(2019年7月19日記事参照)。

この状況の打破には投資拡大が必要とされているが、抜本的な方法として、アントン・シルアノフ財務相やロシア中銀のクセニア・ユダエワ第1副総裁は、石油天然ガスの輸出余剰金の一部を積み立てている国民福祉基金の活用を提案している。オーストリアの大手銀行ライファイゼンバンクは、ウラル産原油価格が年平均で1バレル65ドルだった場合、2020年に2兆7,000億ルーブル(約4兆3,200億円、1ルーブル=約1.6円)、2021年に3兆ルーブル程度を同基金から取り崩すのではないかと試算している(「コメルサント」紙8月19日)。

(注)中銀は主要金利(1週間物入札レポ金利)を6月14日に7.75%から7.5%に(2019年6月19日記事参照)、7月26日には7.5%から7.25%に2カ月連続で0.25ポイントずつの引き下げを実施している。

(齋藤寛)

(ロシア)

ビジネス短信 44b12a3820288d28