インドのプラスチック規制、急速な導入に困惑と反発

(インド)

ムンバイ発

2019年09月18日

ナレンドラ・モディ首相の独立記念日演説(8月15日)以降、インドでは使い捨てプラスチック(SUP:single use plastic)の使用禁止に関し、官民それぞれで大きな動きがあるが、プラスチック製品を取り扱う産業界からは、政府主導の拙速な規制の導入に対する困惑や反発もみられ始めた。

ペットボトル飲料水業界(packaged drinking water industry)は9月9日、政府に対し「飲料水用のペットボトルはSUPに分類すべきではない。そもそも急速な代替は不可能で、産業に約3,000億ルピー(約4,500億円、1ルピー=約1.5円)の損失を与える」と警告した(「タイムズ・オブ・インディア」紙9月10日)。また現地では、政府が10月2日以降、レジ袋やストローなど6種のSUP製品の使用を禁止にするのではないか、との憶測が報じられている。これに先んじて、企業各社が独自にSUP使用を禁止する動きがみられており(2019年8月30日記事2019年9月12日記事参照)、直近では、デリーの高級ホテルJWマリオットが9月9日からペットボトルの使用を取りやめ、管理用QRコードが付されたガラス製ボトルへの置き換えを行った(「ビジネス・スタンダード」紙9月9日)。

一方、SUPの定義をめぐって、「現状、インドにおいて定義は存在しない」と複数の連邦政府職員が認めている(「タイムズ・オブ・インディア」紙9月10日)。例えば、代替品として期待されている紙コップの内側には、防水のためにプラスチックの一種ともいえるポリエチレンが使われているが、SUPとして対象になるのかどうかは不明確だ。モディ首相は9月9日、国連砂漠化対処条約締約国会議において、インドにおけるSUP規制について強調したが、プラカシュ・ジャベードッカー環境相がスピーチ後の記者ブリーフィングで、「首相はSUPを禁止するとは言っていない」と述べるなど、SUP規制に関する政府の方針も不透明感がにじむ。マハーラーシュトラ州の例をみれば、プラスチック製品の使用などに関する規制の導入発表後、産業界からの要望により、規制を一部緩和および対象を明確化する通達を発するなど対応はみられたが、依然として不透明な部分は多く、運用を見極める必要がありそうだ(2018年7月27日記事参照)。

(比佐建二郎)

(インド)

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