米国が化学・生物兵器使用国としてロシアに追加制裁を発動

(ロシア、米国)

欧州ロシアCIS課

2019年09月05日

米国による生物・化学兵器の使用国への追加制裁が、ロシアを標的とし、8月26日に発動された。トランプ大統領が8月1日に署名した米国大統領令第13883号を受け(2019年8月8日記事参照)、米国国務省安全保障不拡散局が策定したもの(公告第10855号)。米国の銀行(注)によるロシア政府が発行するユーロ債市場への参加、ロシア政府に対するルーブル以外の通貨での融資を禁止するほか、米国の製品・技術のロシアへの輸出・再輸出に原則、輸出許可制が導入される。本追加制裁の適用期間は最低1年で、別途、告知が出されるまで継続される。

本公告によると、ロシア政府が国際法に違反し、ロシア国民に化学兵器を用いたことを受けて、米国は、2018年8月6日から3カ月以内にロシアが、「1991年の化学兵器・生物兵器管理と戦争撲滅法」(CBW法)セクション307に記載された条件の順守を求めていた(2018年8月29日記事参照)。しかし、ロシアが条件を満さなかったため、米国国務長官は2019年3月29日に追加制裁を科すことを決定。CBW法セクション307(b)と合衆国法典第22編65章セクション5604(a)、同5605(b)に基づき、2019年3月29日から、a.ロシアに対する国際金融機関による金融・技術支援の阻止、b.米国の銀行によるロシア政府への融資の禁止(ただし、農産品・食品分野を除く)を実施した。

今回の追加制裁では、制定日以降に米国の銀行による、ロシア政府が発行する非ルーブル建て債券発行市場への参画とロシア政府への非ルーブル建ての融資が禁止され、さらに、「1979年の輸出管理法」セクション6に基づき、製品・サービスの輸出に関しては、食品・農産品を除いて禁止され、輸出する場合は、添付資料の表に記載された輸出許可が必要となる。

ロシア外務省のユリヤ・ザハロワ報道官は、8月28日に行われた公式ブリーフィングで米国の追加制裁発動について、「米国が国内選挙対策のために、これまでの米ロ関係を台無しにしてしまったことは残念。制裁は不法な圧力手段で、ロシアのみならず他国にも影響を与えうるもの」と評した。ロシア経済への影響については、「外的な制約に対する抵抗力はこれまでに何度も証明済み」とし、制裁による影響は限定的だと述べた。

(注)米国法もしくは米国の司法権下にある主体(外国の支店を含む)、もしくは、米国内にある主体で、貯蓄、送金、持ち株、ローン・クレジットの仲介、外国為替・証券・先物商品などの売買などの事業に、主体的にもしくはエージェントとして携わる者を指す。主体については、法人、合弁会社、パートナーシップ、協会、トラスト(企業合同)、グループ、サブグループ、その他組織としている。

(齋藤寛)

(ロシア、米国)

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