政府が非営利目的のインターネットプロバイダー公社設立

(メキシコ)

メキシコ発

2019年08月14日

メキシコ政府は8月2日付官報で、メキシコ電力庁(CFE)の子会社として、非営利目的のインターネットプロバイダー事業を行うCFEテレコミュニーケーション公社(CFE Telecomunicaciones e Internet para Todos)を設立すると発表した。公社は、インターネットアクセスがない地域や国民を対象にブロードバンドインターネット接続サービスを提供することを目的とし、国民の情報通信アクセス権を保障する。CFEが敷設した既存の光ファイバーケーブルを利用してサービスを展開するとしているが、財源や収支計画などの詳細は明らかにされていない。

全国インターネット網の整備は、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領が2018年12月の就任前に発表した「7つの優先プログラム」に掲げられており(2018年7月26日記事参照)、エンリケ・ペニャ・ニエト前政権下でも、2013年の通信市場改革(2017年4月24日記事参照)以降、以下の3つの政策が実施されている。

  1. 「つながるメキシコ」事業(México Conectado)
  2. インターネット基幹ケーブル敷設事業(Red Troncal)
  3. 共用インターネット網構築事業(Red Compartida)

1.では学校、図書館、病院などの公共施設を中心に、インターネット環境の整備が進められた。2.では、CFEが所有する既存の光ファイバーケーブルの開発・利用権を民間部門に委譲し、光ファイバーケーブルの伸長を図ろうとしたが、入札が不落に終わって実現されなかった。3.では、民間のアルタン・レデス(Altán Redes)にCFEの光ファイバーケーブルの開発・利用権を与え、モバイルネットワーク構築のため、4.5G用の周波数帯を割り当てた。同社はケーブルなどのインフラを他社に貸し出すことができ、大手通信会社のテルセル(TELCEL)やAT&Tを潜在的顧客として想定している。長い入札プロセスを経て2018年3月から開始し、同プロジェクトは2024年に人口の92%をカバーする目標が課されている。

ロペス・オブラドール大統領は、上記の2.が期待された成果を出せなかったとして、新たにCFEテレコミュニーケーション公社を設立した。しかし、同公社のサービスが有線インターネットの提供のみにとどまり、モバイル用サービスが計画に含まれていない点や、CFEが所有する光ファイバーケーブルには消費者が実際に使用するために必要な回線が含まれていないことから、有効性に疑問が呈されている(「エル・エコノミスタ」紙8月3日)。上記3.との関係性も明らかにされておらず、現時点では不透明な点が多い。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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