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通信市場改革の進展を評価、品目別輸入規制は問題視-2017年外国貿易障壁報告書(メキシコ編)-

(米国、メキシコ)

米州課

2017年04月24日

 米通商代表部(USTR)が3月31日に発表した2017年版外国貿易障壁報告書(NTE)では、メキシコの通信市場改革の進展による競争環境の整備をはじめ、幾つかの分野における改善が評価された。一方、依然として農産品の植物検疫、鉄鋼や繊維製品の輸入手続きなど品目別の輸入規制には障壁があるとされた。

通信サービス分野でAT&Tの市場参入を評価

2017年版NTEのメキシコに関する記述は前年と同じく7ページで、対象には、貿易の技術的障壁(TBT)、衛生・植物検疫(SPS)、輸入政策、知的財産権保護、サービス障壁、投資障壁の分野が含まれた(表参照)。

メキシコの貿易障壁
分野と項目 障壁内容
貿易の技術的障壁、衛生・植物検疫 待機電力を必要とする電子機器の省エネ規格(NOM-032-ENER) 待機電力がわずかな機器であっても規制の対象。米国で認証済みの製品でもメキシコにおける試験と認証が必要
食品安全性 未殺菌牛乳、核果(モモなど)
植物検疫 ジャガイモ
輸入政策 税関 事前通知なしの制度変更、規則・基準の不均一な適用、NAFTA原産性の検認
鉄鋼輸入制度 輸入自動許可
繊維・履物輸入制度 部門別輸入業者登録、推定価格、輸入自動許可
急送貨物 陸路国境における事前通関制度の不備
知的財産権保護 知財侵害を取り締まる法の執行体制の弱さ
サービス障壁 電気通信 不透明で不均一な移動通信網基地局(Cell site)の設置許可基準(地方自治体)
テレビ放送 有料放送の広告規制、テレビ放送市場の寡占
投資障壁 炭化水素資源開発 ローカルコンテンツ、投資紛争における国際商事仲裁の禁止
外資規制 農林水産業、陸上輸送(*)、空港運営(*)などにおける出資規制
土地所有規制 国境から50キロ以内の外国人の土地所有禁止
外資委員会の承認 非規制業種であっても一定額以上(2016年は約1億6,500万ドル、毎年変更)の外国投資には外資委員会の承認が必要

(注)*は新規追加項目。
(出所)2017年版外国貿易障壁報告書を基に作成

まず、前年に比べて障壁が低減したと評価された分野としては、通信サービス分野がある。メキシコでは2013年以降、憲法改正を伴う通信市場改革が進展している。通信市場改革は2013年6月に憲法が改正され、同年9月に新たな規制当局である連邦通信院(IFT)が設立、2014年7月に憲法改正の2次法案である連邦通信放送法が国会の上下両院で可決され、同月14日に公布された。

通信市場改革により、電気通信事業とラジオ・テレビ放送事業の2つの部門でさまざまな競争促進政策(2015年2月23日記事参照)が導入されているが、今回のNTEでは、IFTが電気通信分野で最大手のアメリカモビルおよび関連会社を「支配的企業」に認定し、非対称の規制(ドミナント規制、注)を導入したことにより競争環境が整備され、米国の通信大手AT&Tが企業買収を通じて市場に参入できたことを評価している。さらに、実際に電話料金などが低下し、携帯電話サービスの普及率も上昇したとしている。また、テレビ放送分野でも地上波放送コンセッションの入札プロセスが進行中であることを記載しているほか、電気通信規格に関する米国とメキシコの相互認証合意(MRA)が成立したことも評価している(最終的に2016年10月12日に発効)。

今回のNTEで評価されたその他の分野としては、知的財産権保護の分野がある。商標登録手続きにおいて異議申し立て制度が導入されたこと(2016年6月7日記事参照)、国家検察庁(PGR)の著作権・産業財産権侵害調査特別ユニット(UEIDDAPI)によるインターネットを通じた知財侵害に関する優れた調査・取り締まり体制が評価された。

また、直接評価をしているわけではないが、前年のNTEでは貿易障壁として記載があった鶏肉に対する検疫体制(高病原性鳥インフルエンザが発生している州からの輸入禁止)についての部分が削除されており、この問題が解決したことがうかがえる。

電子機器の省エネ規格などを引き続き問題視

NTEでは品目別の輸入規制や手続きの問題点が引き続き指摘されているが、その対象となっている品目は前年とほとんど変わらない。待機電力を必要とする電子機器の省エネ規格、農畜産物(ジャガイモ、非殺菌牛乳、核果)、鉄鋼(2013年12月17日記事参照)、繊維・履物(2015年2月20日記事参照)などだ。なお今回は、既に適用されている規格や規制に加え、未発効だが草案として公表されているものについての懸念も表明されている。具体的には、外部電源装置の省エネ規格(PROY-NOM-029-ENER)、アルコール飲料の規格(PROY-NOM-199-SCFI)などで、これらは草案の内容について貿易障壁となり得ると米国企業が指摘しているとの記述があり、WTOの枠組みなどを通じてメキシコ政府に働き掛けていくとしている。

NAFTA再交渉で陸上輸送分野の外資開放に期待

今回のNTEでは、投資分野において外資参入が規制されている分野として、前年にはなかった陸上輸送サービスや輸送関連インフラ(空港運営など)が明記された。

メキシコでは陸上貨物自動車輸送サービス(宅配を除く)への外資参入が禁止されており、トラックを所有して貨物輸送サービスを提供する企業は、外国人排除条項を定款に盛り込んだメキシコ資本の企業でなければならない(議決権を持つ株式を外国人や外国企業が1%でも所有することはできない)。そのため、外資系企業は貨物利用運送事業(フォワーディング)を営むことはできるが、その場合はトラックを所有して輸送を行うメキシコ企業を利用してサービスを提供しなければならない。外資参入がないために競争が不足していることもあり、メキシコにおけるトラック輸送のコストは高い。メキシコでフォワーディングを行っている日系企業は20社を超え、コスト低減と差別化のために自社輸送を望む声も多いが、そのためには外資法の改正が不可欠となる。

トランプ政権下で2017年後半にも北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉が開始されるとみられており、交渉で米国側がトラック輸送分野の開放をメキシコ政府に求めるかどうか注目される。メキシコでは歴史的に、NAFTAで米国やカナダに開放した投資・サービス分野について、後にその他の国に対しても自主的に開放してきているため、NAFTAにおける同分野の開放が将来的には米国・カナダ企業以外にも裨益(ひえき)する可能性が高いとみられる。

(注)通信市場への影響力が大きく支配的(ドミナント)だと判断される通信事業者に対し、他事業者より厳しい規制を課すこと。

(中畑貴雄)

(米国、メキシコ)

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